任務に一段落つき、司令本部からもう帰宅しても良いとの通達が入った
あなたは事務所へ戻り着替えている間、昨日の夜を思い出した
あなた(……なんか、深いキスをするようになってから消太さんのスキンシップが増えた気がする…
………その、そろそろする、のかな…)
鏡が目に入って赤く染った自分の顔が映し出された
一呼吸ついてから更衣室の扉を開け、自分の席へ荷物を取りに戻ると珍しくホークスがいた
あなた「ホークスさん
お疲れ様です」
ホークス「あー!あなたさん!
丁度いいところに」
ちょいちょいと手招きされてホークスの机に寄っていくとパソコンを向けられた
ホークス「あなたさんにモデルの依頼来てるんですけどどうします?」
ヒーローが広告の宣伝塔になるのは珍しい話では無い
芸能人並に人気があるヒーロー達がテレビCMに出ているところは今となっては当たり前になった
ファットガムなら食品、ベストジーニストなら服飾系、と適性のある広告に出演している
あなた「モデル……なんの?」
ホークス「ティントみたいですね」
パソコンがスクロールされて3色のティントの画像が映し出された
メーカー名を見てみるとあなたでも知っている大手企業で少し胸が高鳴った
あなた(…モデルなんて特に興味無いけど……)
あなた「あのぅ……ギャラって幾らぐらいなんでしょう…」
そう尋ねるとホークスは耳を貸してくれとでも言うかのようなジェスチャーをしてきて、あなたは座っているホークスに寄るように屈んだ
凡そですが、と前置きがあってから金額を言われたが想定していたよりも遥かに強かな金額に口元を抑えた
あなた「そんな貰えるんですか………」
ホークス「今言った金額は俺が1本の広告に出た時の凡その金額ですが…
あなたさんに依頼が来てるメーカーも大手なのでこれぐらいは期待してていいと思いますよ」
あまりにも多額な金額に、驚いたままの顔で動かせないでいると、ホークスが心配そうな顔をしながら小首を傾げた
ホークス「で、…どうします?」
あなた「やります」
迷いなど一切ない潔い返事をした
撮影日当日
この日までに企業の方とお話をしたりコンセプトを聞いたり、どんなイメージなのかも話し合った
ちなみに金額も
初めての挑戦で緊張はするけど、化粧品会社と契約した際に教えて頂いた金額を思い出し、頑張ろうと心震わせた
メイクさんに商品のティントを塗ってもらっている時、1人のスタッフさんがあなたの元へ焦ったように来た
スタッフ「急遽なのですが、撮影に大幅な変更があって
あなたさん1人の撮影予定から男性と撮影することになりました」
あなた「え?」
なんでも、今日撮影するのはあなただけでなく、同企業から出ている男性用コスメの宣伝として男性俳優も来ていたらしい
スタッフ「メーカーの代表の方もそっちの方が華があるだろうと仰っていて……大丈夫ですかね?」
あなたは特に深く考えることなく、まぁ大丈夫だろうと軽く承諾した
撮影本番
一緒に撮る男性モデルはよくテレビで見る人気俳優だった
名前は確か高橋とかだった気がする
テレビで見る顔と実物は実物の方が輝いて見えて、プロだなと感心した
撮影配置につき、どうすればいいか分からなくて仁王立ちしているとカメラマンさんに声を掛けられた
カメラマン「初めてで緊張しちゃうと思うけど、ポーズとかは高橋くんに任せとけばいいから!何年もやってるプロだからね〜」
あなた「はい
よろしくお願いします」
高橋「お願いします」
軽く会釈を交わして、高橋から体の向き、立ち位置などを微調整されてから撮影に挑んだ
撮影の合図をされ、言われた通り立っていると顎を持ち上げられ至近距離まで詰められた
驚きで固まっているとカメラのシャッター音が鳴り響き撮影だということを思い出した
それからも撮影時は近くてずっと触られた
あなた(…近っけぇ〜〜……不快………
キスしそうなぐらい近いんですけど
消太さんじゃないと受け付けないな)
カメラマン「あなたちゃん!緊張してる?
顔引き攣ってるよ!」
あなた「あ、すみません…」
カメラマン「大丈夫大丈夫!すごい良い感じに撮れてるからあとは雰囲気ね!」
カメラのシャッター音は鳴り続き、高橋に身を任せる時間は流れていった
数日後
相澤の多忙期も過ぎたようで、最近は前よりは早くに帰ってくるようになった
ご飯も食べ団欒タイムになり2人並んでソファに座っていると相澤はあなたの方に倒れてきて膝枕状態になった
あなた(……消太さん膝枕気に入ってるの可愛いな)
甘えられるのが嬉しくて柔らかい手つきで頭を撫でていると、相澤が口を開いた
相澤「…なぁ、あなた」
あなた「ん?」
相澤「………あなたはいつも俺の事、かっこいい好きだって言ってくれるだろ」
あなた「?
うん」
相澤「……甘えるような、かっこよくない俺は嫌いか…?」
不安そうな顔でそう問われ息が止まった
頭の中が"可愛い"で埋め尽くされていく
涙出そう
あなた「ん"っなわけ、ないでしょーがァ……
クソほど好きだ………」
そう言うと安心したような顔つきになりふっと微笑んだ
相澤「良かった」
あなた「あ"ぁ"〜〜〜〜……
好き…好き……もうすっごい好き………
苦しい……」
好きの感情が溢れて相澤の頭を握り潰すのを何とか堪え、優しく撫で続けた
流しっぱなしのテレビをふと見てみると番組ではなくCMが流れていた
あなた(…そういえばあのCMいつ放送されるんだろ
出来れば消太さんには見て欲しくないなぁ……)
なんて考えていたのが通じたのか、テレビに自分が映し出された
やばい、と思って相澤の目を思いっきり塞いだ
相澤「いて…急になんだよ」
あなた「ん、んー?なんでもないですよ〜」
相澤「絶対なんでもなくないだろ」
プロヒ対プロヒでも相澤の方が力が強いのは当然で簡単に引き剥がされた
相澤はあなたの視線があった方へ目を向けると硬直した
相澤「……これ、あなたか」
あなた「…です」
膝の上にあった頭を起こし、テレビをじっと見た
こんなに真剣にCMを見る人間がいるだろうか
多分いま日本ではこの人ぐらいだと思う
相澤「どうして隠したがったんだ
別に言えばいいだろ」
あなた「だって…恥ずかしいし……
私が消太さんだったら見たくないし」
相澤「なんで」
あなた「いくら仕事と言えど、彼女が他の男と至近距離でいるとことか見たくないじゃないですか」
もうとっくに例のCMは終わっていて次のCMが流れている
相澤はもうテレビを見ていなく、ソファに背もたれていた
相澤「……まぁ仕事なら仕方ないだろ」
あなた「私は仕事でも消太さんが他の女の人と近いのは嫌」
そう言うと頭をくしゃと大雑把に撫でられた
相澤「あなたはまだガキンチョだな」
そう言い残してコーヒーを注ぐ為かキッチンへ行ってしまった
相澤の普段と変わらない表情に少し靄がかかった
あなた(……別に嫉妬して欲しかった訳じゃないけど、されないはされないで寂しいな
…そういえば消太さんに嫉妬してもらったことあったっけ)
靄はどんどん募っていき、あなたは不貞腐れた顔で相澤を見つめた











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。