第2話

桜に命を
519
2024/04/11 10:00
らん
……ごめんね、偉琉眞
涙を流す偉琉眞の隣に座り、蘭は寂しげな表情で静かに微笑んだ。
蘭の声は、偉琉眞に聞こえていない。
何も言わなくてごめん。勝手に死んでごめん。
信頼してないわけじゃない。偉琉眞に、余計な心配をかけたくなかったんだよ。
そんな声も届かない。
らん
もどかしいなぁ……こんなに近くにいるのに
触れることすらままならない。
何千回のごめんも、何万回のありがとうも。
偉琉眞には聞こえないのだ。
いるま
馬鹿野郎……馬鹿野郎……っ!
らん
うん。ごめん
いるま
なんか言えよ……一言ぐらい
らん
ごめん
いるま
俺は苦しいのも痛いのも代わってやれねぇし、辛さもわかってやれねぇよ
らん
代わらなくて、わからなくていいんだよ
いるま
でも、一緒にいれただろ……!
らん
言わなくても、いてくれたじゃん
顔色が悪いことに一番早く気付いてくれた。
無理すんなって声かけてくれた。
ふらついたら支えてくれた。
何も言わずに隣にいてくれた。
誰よりも心配してくれた。
らん
俺は、それだけで十分だったから
今も昔も、偉琉眞は最高の親友だよ?
いるま
お前は何でも抱え込んで
らん
うん
いるま
そのくせ人の変化にはすぐ気付いて
らん
うん
いるま
自分が辛いことは言わなくて
らん
うん
いるま
すぐ無理して
らん
うん
いるま
もっとさ、周り頼れよ
らん
うん
いるま
苦しいって、言えよ
らん
……うん
いるま
助けてって!
らん
うん
いるま
辛いって、死にたくないって、痛いって!
蘭の足をすり抜け、偉琉眞の涙が地面を濡らす。
いるま
少しでも言えよ……!
らん
うん。ごめん、ごめんね、偉琉眞
いるま
馬鹿野郎……!
らん
うん……ごめんね
こんなに偉琉眞を傷付けてたなんて知らなかった。
こんなに想ってくれてたなんて知らなかった。
いるま
っ……なんで
偉琉眞が泣き崩れる。
いるま
なんでお前だったんだよ……!
らん
……!
優しく、偉琉眞の頭を撫でる。
らん
俺は、偉琉眞やみんなじゃなくてよかったよ? こんな辛い思い、みんなにしてほしくないから
俺は、みんながいたから幸せだったよ?
馬鹿みたいに笑って、ふざけて。
桜の花みたいに短い人生だったけど、楽しかった。
それは間違いなく。
らん
みんなのおかげだよ……
だからさ、泣かないでよ偉琉眞。
こうして泣くまでしてくれるお前   偉琉眞が親友で幸せだよ。

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