涙を流す偉琉眞の隣に座り、蘭は寂しげな表情で静かに微笑んだ。
蘭の声は、偉琉眞に聞こえていない。
何も言わなくてごめん。勝手に死んでごめん。
信頼してないわけじゃない。偉琉眞に、余計な心配をかけたくなかったんだよ。
そんな声も届かない。
触れることすらままならない。
何千回のごめんも、何万回のありがとうも。
偉琉眞には聞こえないのだ。
顔色が悪いことに一番早く気付いてくれた。
無理すんなって声かけてくれた。
ふらついたら支えてくれた。
何も言わずに隣にいてくれた。
誰よりも心配してくれた。
今も昔も、偉琉眞は最高の親友だよ?
蘭の足をすり抜け、偉琉眞の涙が地面を濡らす。
こんなに偉琉眞を傷付けてたなんて知らなかった。
こんなに想ってくれてたなんて知らなかった。
偉琉眞が泣き崩れる。
優しく、偉琉眞の頭を撫でる。
俺は、みんながいたから幸せだったよ?
馬鹿みたいに笑って、ふざけて。
桜の花みたいに短い人生だったけど、楽しかった。
それは間違いなく。
だからさ、泣かないでよ偉琉眞。
こうして泣くまでしてくれるお前が親友で幸せだよ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!