2018.7.20.
アカデミー長室のドアが閉まった瞬間、肺に溜まっていた空気をまとめて吐き出した。
どの子が良かったか
誰に、どんな可能性を感じたか
気づけば、話題はいつの間にか俺自身のことにまで及んでいて...一向に終わりが見えなかった。
スマホを見れば、19:02。
アカデミー内を見終えてから、あの部屋に閉じ込められて、もう三時間が過ぎていたらしい。
褒め言葉と世辞が重なっていく声を、途中から半分だけ聞き流しながら、俺は別のことを考えていた。
ヒョンに頼まれて来た、アカデミーの視察。
才能のある子は、思っていたよりずっと多かった。
それでも...胸の奥は、妙に静かなまま。
"上手い"と思うことと、"欲しい"と思うことは、どうやら別物らしい。
そもそも、スカウトなんて経験もない。
何をもって決めるべきなのか、輪郭は最後まで掴めなかった。
正直、これが一番の本音だった。
そんな結論を胸の中で転がしながら、マネージャーヒョンに連絡を入れて歩き出す。
その時だった。
廊下の奥から、かすかに滲む音。
数時間前に何度も耳にしていた、EXOの、あの曲。
視線を上げると、消灯されているはずのフロアの中で、一室だけが淡く光っていた。
通り過ぎるついでに、ほんの出来心で足を止める。
ドアの隙間から、そっと中を覗いた。
そこにいたのは、小柄な女の子だった。
狭い練習室にひとり。
床に座り込んだまま、肩がわずかに揺れている。
微かに見える横顔を手がかりに、記憶を探る。
今日の視察で、あんな子を見ただろうか。
答えは...曖昧なままだった。
でも、次の瞬間。
彼女は自分の太ももを、拳で強く叩き始めた。
一度、二度。
感情の行き場を失ったみたいに、何度も。
無意識に、被っていた帽子のつばを下げる。
正体を伏せたままの視察。
ここで踏み込むのは、明らかに余計な行動だ。
そう判断しかけた、その時。
彼女の腕が、大きく振り上がった。
その姿が、一瞬。
何もかも上手くいかず、行き場のない苛立ちを持て余していた頃の"自分"と静かに重なる。
気づけば...指先は、ドアノブのひんやりとした感触を、確かに掴んでいた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!