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第8話

#7
358
2026/01/25 01:18 更新




2018.7.20.



suga
  ...はあ  



アカデミー長室のドアが閉まった瞬間、肺に溜まっていた空気をまとめて吐き出した。


どの子が良かったか
誰に、どんな可能性を感じたか


気づけば、話題はいつの間にか俺自身のことにまで及んでいて...一向に終わりが見えなかった。


suga
  ( ...疲れた )  



スマホを見れば、19:02。
アカデミー内を見終えてから、あの部屋に閉じ込められて、もう三時間が過ぎていたらしい。

褒め言葉と世辞が重なっていく声を、途中から半分だけ聞き流しながら、俺は別のことを考えていた。



ヒョンに頼まれて来た、アカデミーの視察。
才能のある子は、思っていたよりずっと多かった。

それでも...胸の奥は、妙に静かなまま。

"上手い"と思うことと、"欲しい"と思うことは、どうやら別物らしい。


そもそも、スカウトなんて経験もない。
何をもって決めるべきなのか、輪郭は最後まで掴めなかった。

正直、これが一番の本音だった。


suga
  ( やっぱり、俺には向いてないな )  



そんな結論を胸の中で転がしながら、マネージャーヒョンに連絡を入れて歩き出す。

その時だった。



廊下の奥から、かすかに滲む音。
数時間前に何度も耳にしていた、EXOの、あの曲。



視線を上げると、消灯されているはずのフロアの中で、一室だけが淡く光っていた。

通り過ぎるついでに、ほんの出来心で足を止める。
ドアの隙間から、そっと中を覗いた。


suga
  え...  



そこにいたのは、小柄な女の子だった。

狭い練習室にひとり。
床に座り込んだまま、肩がわずかに揺れている。


suga
  ( ...泣いてる、のか?)  



微かに見える横顔を手がかりに、記憶を探る。
今日の視察で、あんな子を見ただろうか。

答えは...曖昧なままだった。



でも、次の瞬間。


suga
  ...っ  



彼女は自分の太ももを、拳で強く叩き始めた。

一度、二度。
感情の行き場を失ったみたいに、何度も。


suga
  ( まずいな、止めるべきか?)  
suga
  ( いや、でも... )  



無意識に、被っていた帽子のつばを下げる。

正体を伏せたままの視察。
ここで踏み込むのは、明らかに余計な行動だ。

そう判断しかけた、その時。



彼女の腕が、大きく振り上がった。



その姿が、一瞬。
何もかも上手くいかず、行き場のない苛立ちを持て余していた頃の"自分"と静かに重なる。


気づけば...指先は、ドアノブのひんやりとした感触を、確かに掴んでいた。



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