__L社の裏路地
黒雲会構成員「...ったく、お前らがさっさと払わねぇせいで面倒な奴らが来ちまったじゃねぇか。...おい、お前ら何の用だよ。」
サミュエルに鋭い刃先を向け、そう凄んでくるのは黒雲会構成員。黒い長髪を後ろで乱雑にまとめ、気だるげに細められた目からは殺気が放たれていた。煙草から立ち上がる煙が、暗い裏路地の夜の空へと消えていた。
恐らく彼がこの集団のリーダーだろう。
サミュエル「彼らは私たちの保護対象です。貴方たち黒雲会からの取り立てから守ってくれと、そう依頼を受けたのですよ。」
あくまで冷ややかにそう伝える。後ろに控えた彼の部下たちも、警戒態勢を解かずに控えている。
構成員より背が高い彼は、かけていた眼鏡を外すとすぐさま構成員の方へと走り出した。それを合図に後ろに控えた部下たちも走り出す。
サミュエル「先ずは対象の保護から...。」
保護対象の男性たちへと近づこうとした途端、先ほどの構成員が前に立ちはだかった。
構成員「こいつら取り立てなきゃ、俺もボスに殺されちまうんでね。」
サミュエル「.....そうですか。なら、私も手加減はしません。元々貴方たちは撒くつもりでしたが、殺すつもりなら、こちらも殺さねばというもの。」
構成員「知ってるか?話が冗長だと.......隙が生まれるって事をよォ!!」
構成員がサミュエルに向かって斬撃を放つ。
サミュエル「単調ですね。直線的な攻撃は当たりませんよ。」
ひらりと横に躱し、素早く構成員に近づきガントレットで鳩尾に拳を入れる。彼は瞬時に身体を捻って躱し、サミュエルとの距離を取る。
サミュエル「....ふむ。中々に強いようですね。若衆の長か副長と言ったところでしょうか。」
紫の長髪をかきあげ、もう一度攻撃の構えを取る。
相手は刀、サミュエルは拳。リーチ的には圧倒的に不利だ。丸腰と言っても過言ではないサミュエルと、リーチ的有利を持っている相手。サミュエルが出した答えは......
サミュエル「....私、勝つために拳に拘る必要はないと思っています。」
次の瞬間、乾いた音と共に構成員の肩には風穴があけられていた。
構成員「ぐっ......がっ.....クソが...。てめぇ...銃持ってやがったのか...!」
苦しげな表情を浮かべる構成員に向かい、サミュエルは
サミュエル「貴方がフィクサーであったなら、私は礼儀を弁えていましたでしょうね。しかし、貴方はフィクサーではなくて”組織”だ。協会が認めぬ貴方に払う礼儀は無い。」
そういい捨てると銃を構えなおし、しっかりと彼の眉間に銃口を当て.......そのまま引き金を引いた。
構成員の脳髄と血液が、空いた風穴から漏れ出ていた。サミュエルはそれを一瞥し、何事もなかったかのように部下の元へと戻った。そこではすでにほかの構成員らも殲滅されており、たった一人、本当のリーダーらしき人間だけが残っていた。
副組長「クソが.......」
どう打開しようかと視線をさ迷わせていた彼は、戻ってきたサミュエルを見た途端、急にうろたえ始める。
副組長「お、お前.....‼クソっ!どうしてお前がここに....!!」
サミュエル「ん?.....あぁ、貴方でしたか。”その節”はどうもお世話になりました。」
サミュエルは冷静な表情を崩さずにそう言った。彼には、親指の黒雲会に所属していた過去がある。そこでの通り名は”死神”だとか、”人切り夜叉”等々。とにかくいろいろと言われるほど強かった。
サミュエル「...私、親指の過剰な”礼”に嫌気がさしたんですよね。死神だの人切り夜叉だの、色々言われましたけど....まぁ、今の私には関係ありませんね。」
副組長「まっ、待て‼今俺を殺せば組織がやって来る‼...お、お前たちにも不利益があるって事だぞ。」
存命の道を見つけた、とでも言わんばかりにそう口にした。サミュエルは、はっとして時計を見た。それが意味する事、それは.....
サミュエル「いいえ、ここで貴方を殺しても何も問題ありません。何せ、間もなく”裏路地の夜”ですから。....あれ、おかしいですね。人にものを頼む態度が欠けているのではないですか?礼を重んじる親指の傘下とはとても思えません。....では。」
一方的に捲し立て、構えた銃の引き金を引いた。副組長の叫びかけた声は、銃弾によって貫かれた喉を通って外に出る事は無かった。
サミュエル「...さて、そろそろ帰りましょうか。裏路地の夜まではまだ少し余裕がありますからね。貴方たちも家に戻るとよいでしょう。」












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。