義務教育も終わる頃、男の子さらに成長し、すでに父親と肩を並べるほどに大きくなっていた。もはや男の子ではなく、一人の男となった。
男は、地元では有名な不良となっていた。父親譲りのキツイ目つき、睨んだ、睨んでないだで喧嘩を売られ、100戦100勝の無敗の男。母親譲りの銀色の髪。染めているとか、見た目が違うとかで絡まれた。相手が年下だろうが高校生だろうが、売られた勝負に負けはない。誰もが彼を恐れた。
しかし、男は争いをしたくなかった。皆と普通に喋って、普通に遊んで、普通に過ごしたかった。しかし、生まれた家、風貌がそれを叶えなかった。
彼が高校2年生の夏、事件が起きた。父と母が襲撃されたのだ。“そういう”役職のため、多方面に味方もいれば、その味方以上の敵がいる。
彼が学校で殴り合いをしているとき、父と母は取引に向かっていた。その道中であった。人通りの少なくなった裏路地を、車から降りて通っていたときであった。
耳を貫く銃声が2回響いた。その銃弾は、2人の腹を貫通した。
「ぐぁっ……!!」
「ゔっ…!」
異変に気づいた付き添い達が2人に駆け寄り、体を支える。しかし2人から流れる血は止まらない。
「やられたよ…、裏切られた、アンタ達は引きなさい。」
「あぁ、逃げろ、どうせこの人数の差では勝てん。」
額に冷や汗がにじみ、息が上がっていく。異様に血の巡りが早くなり、鼓動が全身で感じ取れる。
「しかし…!」
「逃げろといっている、俺の命が聞こえんのか。」
「………。」
付き添い達は長の命に反して、必死の形相で長と妻を抱えて車に戻った。何人か、銃で撃たれて負傷していく。
「アンタ達…!」
「何をしている!!」
付き添い達は、自分たちの長と姐を命に変えて守ると決めた。付き添い達は、長達の命よりも長達の命 を守ることを優先した。
「早く車を出せ!引くぞ!」
長と姐を乗せた車は、銃声の響くその場をあとにして、勢いよく走り出した。
「止血しろ!!」
「どうすりゃいいんだ、血が止まんねーぞ!!」
銃弾が腹を貫通しているため、中々止血ができない。2人の流れる血の量は増していき、呼吸も浅くなっていく。2人は、体の限界を感じていた。
「おい…、アイツに…、ちゃんと飯だけは食うようにって…、言っとけよ…。」
「貴方…。」
「組長!姐さん!!」
長と姐は手をつなぎ微笑む。長はつぶやく。
「大丈夫だぁ、きっと、なんとかならぁ。」
「ふふ…、その能天気さ…、本当…、誰かに…、そっくりだわ…。」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!