第3話

 episode.2
905
2025/03/26 12:10 更新




 jake
 jake
 ねぇ知ってる? 
 jake
 jake
 昨日の夜さ、駅前で事故あったんだよ 
 niki
 niki
 ……あぁ…うん 
 jake
 jake
 亡くなったの、俺のバイト先のお客さんでさ 
 jay
 jay
 焼肉店の? 
 jake
 jake
 そ。良い人だったんだ
 なんかもう…びびった、つーか 


  ジェイクは切なげに目を伏せた。

 jake
 jake
 本当…人の運命なんて分かんないものだなって 


  練習前。

  ダンスシューズに履き替えていた
  ニキはそれを終えてロッカーを閉じる。



  人の運命なんて、わからない。
  けど…昨日、俺は。

  1人の人の死ぬ運命が、見えた。

  もうすぐ命を落とす人間が、透けて見えた。

 niki
 niki
 …………もしさ 
 niki
 niki
 もし…わかったらどうする? 
 jay
 jay
 …ん? 
 niki
 niki
 人の、運命 
 niki
 niki
 例えば…死ぬ運命がわかる、とか 


  普段生活している中で
  あまり聴くことのないその質問に
  2人が「ん?」という表情で顔を見合わせた。
  
  よく冗談ばかり言うニキが
  真剣な顔をしているからなお、不思議に思う。

 jay
 jay
 ……よくわかんねぇけど 
 jay
 jay
 俺はそんなん、分かりたくないな 
 jake
 jake
 人の運命なんて、
 知らない方がずっと楽だよ 
 jay
 jay
 同感。運命は変えられるものじゃない 


  ま、でも自分が死ぬ時は気になるかもな。
  それまでに全財産使い切るわ、俺。

  と、そこから2人は別の話をし始めて
  ニキもその会話に加わる。

  

  そうだ。関わらないに、越したことはない。
  人の運命には逆らうべきじゃない。

  忘れよう。

  無視していれば、この力だって。
  そのうち消えていくかもしれない。








 いらっしゃいませー 
 お一人様ですか? 


  今日も、いつも通りのバイト。

  金曜日はカフェよりも酒を飲みに行く人の方が多くて。
  店内も少し空いていて、ありがたい。

 でさー、その彼女が今度合コン来るんだって 
 ニキもいこうぜ、一緒に 
 niki
 niki
 嫌だって、興味ない 
 えー?なんでだよー 


  アイドル目指してるから
  恋愛系はちょっと…とは、言えない。

  アイドル練習生だってことは伏せてるし、
  言って深掘りされるのも嫌だし。



  めんどくさいなこの話…と思っていれば、
  ちょうど客が入ってくる
  カランカランというドアの音が聞こえた。

 niki
 niki
 いらっしゃいませ 


  ナイスタイミング。
  我先にとドアの元まで向かい、接客をしようとすれば

 sunoo
 sunoo
 …この間の店員さん? 
 niki
 niki
 …え…… 


  目の前で、嬉しそうに微笑む彼。
  この間と同じようにマスクをつけていて…

  気のせい、だろうか。
  少し息が上がっているように見えた。

 sunoo
 sunoo
 あ、覚えてないですよねすみません! 
 sunoo
 sunoo
 一昨日…くらいかな?
 ここ来て、接客していただいたので 
 niki
 niki
 …あ、いえ。覚えています 


  覚えてる…と言うか、忘れるはずがない。
  
 niki
 niki
 カフェオレ…ですよね。砂糖多めの 


  俺が言うと、
  彼は少し恥ずかしそうに手で口元を押さえて笑う。

 sunoo
 sunoo
 はい、お願いします 


  肌の色が白く華奢なその指先は、
  中性的で儚さがある。

  その手を見て、ニキは目を見開いた。

 niki
 niki
 ……っ 


  その、彼の手が。透けている。
  彼の手を越して、つけているマスクがうっすらと見えた。

 sunoo
 sunoo
 ……店員さん?どうか、しました? 


  固まったニキを、
  ソヌが不思議そうに見つめる。

 niki
 niki
 あ…いえ。お席に、ご案内いたしますね 


  ニキは表情を崩さずに
  この前の席にソヌを案内して、キッチンへ戻る。

  指先が震えていた。
  なんで…透けて見えるんだ。





  ……いや、違う。
  なんでじゃない。分かってる。

  透けて見えたと言うことは、つまり。

  彼の死期が、
  すぐそこに迫っていると言うこと。









 niki
 niki
 お待たせ致しました 
 niki
 niki
 カフェオレです 
 sunoo
 sunoo
 ありがとうございます 


  届けたカフェオレを飲んで
  おいしい、と嬉しそうに小さく呟く。

  その姿は、さっきよりもさらに透けているように見えた。

 niki
 niki
 …… 


  彼は死ぬのだろうか。
  今夜か、もしくは…明日の朝か。

  彼の作る音楽を聞けなくなる。
  彼の声も聞けなくなる。その姿も、もう。2度と見れない。

  こうして、2回もうちの店に
  来てくれたこの喜びは苦しさに変換される。

  美味しそうにカフェオレを飲む姿すら、
  思い出したくもなくなる記憶になる。




  死ぬとは、そういうことだ。
  彼はそういう、運命だったのだろうか。






  「 運命は変えられるものじゃない 」
  ジェイの言葉をニキは思い出した。




  …そうだな。俺もそう思うよ。
  運命なんて関わらない方がいい。

  けれど…彼だけは。
  彼の運命がすぐそこに迫ってるのだとしたら。










   






 niki
 niki
 …キムソヌさん 


  俺が名前を呼ぶと、
  彼はカフェオレから目を離して顔を上げる。
 niki
 niki
 貴方に、大切なお話があります 
 niki
 niki
 今夜…30分だけ、時間を頂けませんか 


  彼は、ふっと俺から目を離してうつむいた。
  困っているんだろう。当然だ。

  急に訳の分からない事を
  言ってくるような人間を警戒しないはずがない。

  ましてや彼は、芸能人だ。
  こんなふうに声を掛けられる事だってあるかもしれない。




  それでも…これだけは。
  どうしたって、譲ることができない。














 sunoo
 sunoo
 駅前のファミレスで…待っててもいいですか? 
 sunoo
 sunoo
 22時くらいまでなら、いけると思います 





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