第8話

109
2026/06/26 03:00 更新





合宿3日目。

監督が全員を集める。
監督
今日は実戦形式でやる。

選手たちの空気が変わる。

緊張感。

翠も小川も表情が引き締まる。









スタッフがホワイトボードに名前を書く。

翠と小川が同じチーム。

小川は心の中で少し安心する。
小川 智大
(東雲さんと同じチームだ。)
翠は特に反応なし。

でも、小川が同じチームだと確認して、小さく頷く。









試合前。

翠が全員を集める。
東雲 翠
ブロック見ていこう。
東雲 翠
サーブカット返れば大丈夫。
長々とは話さない。

でも必要なことだけを伝える。

みんな自然と頷く。

小川は思う。
小川 智大
(この人、言葉が少ないのに安心する。)









相手サーブ。

サーブレシーブ。

小川がきれいに返す。

翠が走る。

トス。

スパイク。

得点。

翠は派手に喜ばない。

でも、
東雲 翠
ナイス。
その一言だけ。アタッカーは嬉しそう。









相手の強打。

小川がギリギリで拾う。

翠がコート外まで走る。

体勢を崩しながらもバックトス。

アタッカーが決める。

体育館が少し湧く。

監督も、
監督
いいラリーだった。
翠は息を整えながら、

小川の方を見て

ほんの少しだけ口角を上げる。

小川はその笑顔を見て、
小川 智大
(……笑った。)









ベンチ。

小川がタオルで汗を拭いている。

翠が近づいてくる。
東雲 翠
ナイスレシーブ。
突然だったから小川は固まる。
小川 智大
ありがとうございます!
東雲 翠
あと一本。
それだけ言ってコートへ戻る。
小川 智大
(よし。)









勝利。

みんなハイタッチ。

翠も自然に輪に入る。

小川ともハイタッチ。

今度はぎこちなくない。














ボールを片付けながら。
小川 智大
東雲さん。
東雲 翠
小川 智大
やっぱりセッターってすごいですね。





少し考える。
東雲 翠
違う。
小川 智大
え?
東雲 翠
セッターがすごいんじゃない
東雲 翠
みんなが打ってくれるから、俺はトスを上げられる。
東雲 翠
一人じゃ点は取れない。
小川はその言葉を静かに聞く。




小川 智大
だからセッターになったんですか?
少し笑う。
東雲 翠
中学で監督にやれって言われて。
東雲 翠
最初は嫌だった。
東雲 翠
でも。
東雲 翠
誰かが決めて喜ぶ姿を見る方が好きだった。














ホテルへ戻る道。

小川は一人で歩きながら思う。
小川 智大
(東雲さんは、自分が目立ちたい人じゃない。)
小川 智大
(誰かを輝かせたい人なんだ。)




その頃。

翠は部屋で今日の練習ノートを書く。

最後に一言。

「小川 対応力◎」

・サーブ ○
・トス ○
・ブロック △

小川
レシーブ範囲が広い。
対応が早い。





プリ小説オーディオドラマ