『父上…ありがとうございます!!』
屋敷に戻ったあなたの手には、ふわふわの白きつねが抱かれていた。
まだまだ子ぎつねだ。
「ちゃんと世話してやりなさい」
『はい勿論です』
失礼します、と部屋を出ていった息子を見送りながら、ウィルヘルムは机に置いてある写真を手に取った。
「あなたももう11歳だ。…ミリア」
幸せそうに手を取り合う若い男女が写真の中からウィルヘルムに手を振る。
それに手を振りかえし、ウィルヘルムは写真たてをもとに戻した。
「君もいてくれたら…」
***
『名前は何にしようか…』
いつものソファーに座り、膝に子きつねを抱いて考えていると、扉が開く音がして、兄のクローディスか入ってきた。
「あ、あなた。お帰り。ダイアゴンはどうだった?」
『兄上。ただいま。楽しかったです、凄く。ホグワーツに私と一緒に入学する女の子に会いました。それから、これ』
膝でまどろんでいた子ぎつねを持ち上げて見せると、不満げにキュンキュン鳴いた。
クローディスが可愛いな、と鼻先をつつくと嫌そうに顔を背ける。
「だが父上も困ったものだな。ホグワーツでは猫と梟と蛙以外は認められていない気がするんだが…」
『そういう兄上だって、鷹を飼っておられますね。どうせホグワーツにも連れていってるんでしょう?』
ばれたか、とクローディスが肩を竦める。
「だって放って置けないだろう?同室の奴さえ許してくれれば飼うのは容易いよ。お前の狐もこんなに可愛いんだ、大丈夫だろ」
『はい、連れていくつもりです。父上もご存知ですし…』
「どうせ『みんな同じじゃつまらないだろう?』とでもおっしゃったんだろ?俺のときもそうだった。父上は学生時代、大きな蛇を飼われていたらしいぞ」
餌の蛙が苦手なのにな、とクローディスが笑う。
「お前、杖は?」
『ああ、これです』
ポケットから出した杖に、クローディスが口笛を吹いた。
「良い色だな。綺麗だ」
『たしか、イチイの枝にセストラルの尾、先端にペガサスの蹄…でした。杖はひとりひとり違うのですね。あんなにたくさんの杖を見たのは初めてです』
「オリバンダーだろ?あの人はすごいよ。俺のはこれだ。柳の木にドラゴンの爪、不死鳥の風切り羽根」
かっこいいだろ?と少し赤みがかかった、あなたの杖より一センチほど長い杖を見せる。
思えばしっかり兄の杖を見たのは初めてだった。
『柳の木…』
「ああ、母上と同じらしいな…お前のはイチイの枝だろ?父上と同じだ。それも羨ましいな」
膝にいた子きつねがあくびをした。
『…母上は』
「ん?」
『いや…なんでもありません。勉強、してきます』
子きつねを抱いて立ち上がり、クローディスに軽く頭を下げて部屋を出た。
ー…母上は、どんなひとだったのですか。
言えない言葉は頭の奥で燻ったまま。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!