ー1ヶ月前
山を下り、私達は広い街を初めて目にした。
街の中に時計が立っており、確認してみれば時刻は14時辺りだった。朝早くから山を出たからだろうか。思ったよりも日は暗くなく明るかった為、私の白い、少し汚れた服はとても目立ちそうで少し恥ずかしかった。
洋服を買いたいけれど、育ってずっと研究所に居た為お金は勿論ある訳もなく、私達は途方に暮れていた。悩んで居れば、シディはふと思い出したかのようにポケットに入っている巾着を取り出した。
中には何か入っているのかとても膨らんでいる。
そう言いながら巾着を開け、シディはヒサメに中身を見せた。
中にはキラキラと輝く、沢山の宝石が入っていた。とても高価そうな物ばかりで、思わずヒサメは、目が離せなかった。
売れば恐らく中々いい値がつきそうだが、少し抵抗がある。それに、貰ったものだと言われれば更に売る選択肢なんて選べる筈が無い。
他に良い方法は何かないのだろうか。とヒサメの思考はグルグルと巡る。
今、住む場所も無ければ、服もなく、食事もまともに取れない。このままだと2人して餓死して死ぬかまた山に戻る事になり得る。
シディの押しの強さにヒサメは折れ、その宝石を売りに行く事にした。
売れば、かなり良い希少な物ばかりだったようでお金はどっさりと貰えた。時間が許す限り服を買ってご飯を食べ、二人で初めての街を回っていた。
外は、こんなに楽しい場所だったんだ。
私の瞳には外の景色全てがキラキラと輝いていた。
シディは笑みを浮かべながらそう言い返した。
ヒサメはうわーと顔を両手で隠しながら恥ずかしがった。まさか、自分がこんなにも食いしん坊何て思っていなかったのだろう。
そういえば、カンナちゃんもご飯の時は何となく引いた目で見てたような…。
シディに励まされながら、ヒサメは、まぁ食べるのは悪い事じゃないと自分に言い聞かせた。
その日の夜は、シディとホテルに泊まり、何とか過ごした。お金を数えながら、トッププレデターから盗んだ資料を眺め、私はひたすら情報を頭に入れていた。
早くしないとカンナちゃんが危ないかもしれない。時は金なりと言うように、私達には時間が無い。早く行動に、上手く時間を使っていかなければ行けない。
シディのその言葉を聞き、時計を見ると時刻は23時を過ぎていた。
私は明日の為に荷物を纏め、シディに挨拶して部屋を後にした。
明日は今後どうして行くか決めないと。幾つか資料を奪えたけど、いつ動かれるか分からない。
私はそのまま眠りについた。
焼かれたであろう黒い後、酷い臭いと崩れているコンクリート。まるで廃墟の様な場所になっていた。
日が経ち、ヒサメ達は資料に書いてあった他の研究所に向かった。街からはそこまで離れては居なかったが、人は寄り付かなそうな所だった。
いざ来てみれば、着いた頃にはもうこの有様だった。トッププレデターは盗まれた資料を把握しているのだろうか。動きが早すぎる。
ヒサメは数歩歩き、燃えカスを拾い上げた。
確実な証拠はない。だが、幼い頃から隣で見ていたヒサメは間違えなく、カンナの能力だと分かった。
生きている安堵と、怒りと悔しさ。色んな感情があったが、それでも冷静でいようとヒサメは周りを見渡した。
シディは、ヒサメの怒りを感じ取ったが、何も言うことは無かった。一緒に崩れた研究所の捜索を始めた。狼男のDNAを持っているからか、シディの鼻を酷い臭いが刺激していた。思わず鼻をつまむ。
誰がどう見ても、この景色はとても酷いものだった。
燃えて消えたあの研究所には、何も残されていなかった。結局私達は遠回りしてしまった。
帰り道、ふといい物が無いかと小さなお店に寄った。看板には、『リサイクルショップ』という名前がデカデカと書かれていた。
私は気を紛らわす為に何かをしていたかった。
シディも一緒にお店に入り、本格的に物を眺め始めた。棚にはズラリとものが並んでおり、見たことの無い物や、トッププレデターで教えて貰った物まであった。
シディの声の方へ行ってみれば、惚れ薬や24間外れない手錠など面白そうな物があった。
後ろから声を掛けられ、シディと私は肩をビクッと震わせた。声の方へ振り向き、姿を確認するとそこには茶髪の大人の女性が立っていた。
どうやら、気にかけて態々声を掛けてくれたみたいだった。とても優しい口調で話し掛ける彼女は、綺麗でカッコイイ姿とは別のギャップが印象的だった。
私が頭を下げると、そのオーナーさんは私達の姿をじっと見つめ、ゆっくり見ていくと良い。と返事をしてくれた。
気軽に話してくれるオーナーさんに私もシディも色々な事を話し合った。
気が付けば外は暗く、今から取れるホテルが有るかどうかとても焦る。研究者の人達が使っていた、タブレットや、スマートフォン等は私は持っていない。空席状態も分からなければ此処からの駅の行き方も知らない状態だった。
どうしようかとモタモタしていると、お店を閉めようとしていたオーナーさんがどうした?と聞きに来てくれた。
今、住まいが無い事、私たちには事情があって親がいない事を伝えた。
そう言うと、オーナーはすぐ真隣にある下へと続く階段を降りて行った。
シディと顔を合わせ、ハテナを浮かべながら恐る恐る着いていけば、地下は思っていたよりも広く、部屋が拡がっていた。
オーナーさんは笑顔で私達に答えてくれた。
私は嬉しかった。
こんな大人は、初めてだったから__。
それから3日。
色々な手続きとオーナーさんとの話し合いで、私達はリサイクルショップの地下で過ごす事にした。
シディは成人をしていたけど、私は未成年だったから、オーナーさんが身元保証人になると言ってくれたので、ある程度の自由が私たちには出来た。
シディと話し合い、此処を拠点にトッププレデターを探す事に決めた。取り敢えずこの場所を継続させる為にも、働かなければ行けない。
お金が無い訳では無いが、食事や生活用品、その他諸々を考えると、いつかは消えてしまう為、早めに対策を練ることにした。
シディは早めにバイトを見つけ合格し、配達のアルバイトを始めた。私はまだ17歳だった為、外は危ないと言われ、オーナーさんの所でアルバイトをしていた。
そんな生活をし、約3週間程経った時だった。
資料の中にあった研究所の場所を私は特定した。シディと行ってみれば、まだ形はしっかりと残っていた。次こそは逃がさない。私の頭の中にはそればかりが響いていた。
作戦通り壊し、中に入った。
中には知らない人ばかりで、カンナちゃんもいなければ、シディのお母さんも居なかった。
まるで踊らされているみたいに、私達は資料の情報通り、研究所を次々と壊していた。
別に大きい研究所って訳でも無く、人は最低限に、盗まれてもいいような物ばかり用意されていたようだった。
シディは空になった研究所の中を歩きながら私に声を掛けた。
用が無くなった研究所を後にし、私達はリサイクルショップの方へ戻ってきた。
こんな事繰り返しても、本当に見つかるのかな。そんな不安と、焦りがジワジワとヒサメを蝕んでいた。
それから私達は謎の混血児と会って戦い、私が毒を盛られ負けてしまい逃げてきた。
あの変わらないトッププレデターの景色は、私には苦しかった。
人気のない路地裏に2人の人物が居た。
そこには、アザミともう1人、青年がいる。
アザミは資料を眺め、確認が終われば懐にしまった。
青年は、冷たい視線をアザミに向けながら質問をする。面倒臭いという雰囲気よりかは、青年はアザミが嫌いそうであった。
そう言いながら、アザミは小さい紙を青年に渡した。それは、メモのようで中身を確認する。
溜息をつき、青年はメモをポケットに入れ歩き出した。特に挨拶も無く、そのまま買い物に向かう様だ
アザミは青年がいなくなるまで路地裏で立っていた。
丁度この頃、カゲチヨが目を覚まして1週間経った辺りだった。
……To be continued

























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。