敵は、俺の10倍は強いと言われていた。
Sランク魔獣《ダーク・フェンリル》。
一撃で街を壊すほどの力を持つ、最悪の存在。
仲間たちの声が、震えて聞こえる。
当然だ。
こんな化け物、普通なら勝てるはずがない。
それでも――
俺は、剣を握りしめて前に出た。
自分に言い聞かせるように、そう呟く。
胸の奥で、熱い何かが燃え上がった。
逃げたら、全部終わる。
ここで負けたら、守りたいものは消える。
その瞬間、
俺の魔力が、嵐のように溢れ出した。
風が唸り、地面が割れる。
仲間たちが、驚いたように俺を見る。
――もう、逃げない。
――もう、負けない。
俺は剣を構え、
まっすぐに敵を見据えた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!