シンプルな白いTシャツとスキニージーンズに着替え、
ボサボサの髪はストレートアイロンで制する。
メイクは、色つき保湿リップのみ。
もしさっき、あのイケメンと"あのような初対面"を
していなければ、本当はもっと、ちゃんと時間を
かけていたはずなのに。
「もう見られたし、いっか」と自分に言い訳をして
あっけなく終わった身支度。
最後に、ドアの横に置いている全身鏡でチェックする。
つまり、いつも通り。
てことで部屋を出て、何気なく階段を下りようとした
瞬間。
下から上がってきていたイケメンと
ばっちり目が合ってしまった。
恐る恐る名前を呼ぶと、
彼はふっと微笑み、「うん」と小さく頷いた。
上がってきた階段を引き返すその背中を
そっと追いかける。
リビングに入った瞬間、食卓いっぱいに並ぶ
料理と目が合い、お腹はしびれを切らしたかのように
グゥ〜っと鳴った。
キッチンに目を向けると、兄は炊飯器から
ご飯をよそっていた。
即答すると、兄はそれ以上何も言わず、
茶碗にご飯を重ねていく。
一回、二回、三回、四回。
こうして、私専用の"大盛りご飯"は、
その完璧なビジュアルで完成したのだった。
兄とサンウォンさんに挟まれる形で席に着いた私は、
みんなで「いただきます」と声を重ね、箸を取る。
ひょいっと掴んだのは、私の大好物_からあげ。
それを自分の口には運ばず、そのまま兄の口元へ
差し出した。
ターゲットは眉間に皺を寄せ、訝しげな表情のまま、
しかし何も言わずに、からあげをゆっくり口に含んだ。
一瞬で図星を突かれるが、まったくもって問題ない。
疑いを受け流すように、次はポテトサラダを
口元へ運ぶ。
不服そうにしながらも、なんだかんだ食べる姿を見て、
私はニコッと笑みを作って見せた。
口をモグモグさせながら、そう言う兄。
よし、キタ。
私は一度箸を置き、そっと体を向ける。
モグモグしていた口が一瞬だけ止まる。
私の言葉で宙に舞う鋭い視線。
この感じは…
やっぱり。
兄は呆れたように目を回す。
その様子に、向かいに座っていた母が小さく笑った。
私の不満をさらっと受け流す兄。
その様子を見ていたサンウォンさんは、クスッと
面白そうに肩を揺らす。
こうして、三人でショッピングモールに行くことが
決まった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。