…悩みに悩んで、ボクはひとつの答えを出した。
それは、"誰の手も取らない"ということ。
"ボクはマネージャーだから、皆のことは好きでも、結婚は出来ない
ボクと皆、それぞれの幸せの道を歩もう"
そんな感じの内容を送信した後、ボクはそのまま布団に潜り込んだ。
深夜まで考えて出した、苦肉の策だ。それにきっと、皆もこの方が、幸せになれるから。
罪悪感と自己嫌悪を抱え、眠りについた。
いつもより長く寝てしまったような気がして、時計を探そうと、時計の定位置に手を伸ばした。
つもり、だった。
…目を開いてみると、そこはボクの家の景色では無かった。
何やらやけに豪華なベッド。それに、視界に入る家具たちも、高級そうなものばかり。
急いで飛び起きようとしたものの、足には枷が着いていて、ジャラ、と鉄の音がした。
初めは夢を見ているのか、と思ってしまった。
こんなに非現実的なこと、起こるわけない。そもそも、こんなこと、起こって欲しくないんだ。
ボクは思考が停止してしまって、しばらくベッドの上で座り込んでいた。
すると、扉がガチャ、と音を立てながら開いた。
その先にいたのは、いつもの笑顔を浮かべた、なかむさんだった。
良かった、知らない人に攫われた訳じゃないんだと、知った顔を見て、酷く安心してしまった。
なかむさんは、ボクの事を抱きしめてくれたかと思えば、耳元でそんな事を吐かれた。
今まで聞いたこともないような、低い声。
急いで顔を見ると、その笑顔は、ハリボテのように張り付けられているもので、目の奥は光を失っているように見えた。
枷を外されて、強引に手を引っ張られて部屋を出ると、そこには本当に、皆の姿があった。
上手く状況が呑み込めないまま、ボクはしばらく皆に導かれるまま行動した。
そしたらいつの間にか、大きな机を、7人で囲んでいた。ボクを、中心にして。
「「「いただきまーす!」」」
そうやって、色んな人から食べさせられていた。
だけど、現実を受け止め始めた時、ボクの涙腺はまた壊れてしまった。
暫く沈黙が流れた後、なかむさんが口を開いた。
ボクの問いかけを聞いた瞬間、皆の顔色が、ぐっと暗くなってしまった。
どうしよう、怖い。いつもの皆が、居なくなってしまった。どうなるのかな、殺されちゃうのかな。
そんな事が、ぐるぐると頭を駆け巡っていた。
横から、ぬるりと蛇のように手を体に這わせられる。
皆の全部が、今のボクにとっては、全てが恐怖に思えてしまって、鳥肌が立つ。
そう、にこやかな笑顔で言われても。
その答えなんて、1つしかないじゃないか。
そうなかむさんが言うと、また皆はさっきのような賑やかさを取り戻した。
あぁ、皆の声が遠く感じる。
……こうなってしまったのは、全部ボクのせい。
それなら、今自分に出来ることを一生懸命に、やって行こう。
…これからも、生きていくために。
__End



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!