朝の空気は澄んでいて、静かな街の景色の中、人々はゆっくりと動き出していた。
肩に小さな鞄を掛け、僕は三日月本屋の扉をそっと閉める。
この場所にいたのは、ほんの二日間だけ。
この 本屋を借りたのは今回が初めてだったが、その短い時間でも、ここの環境は悪く無かった。
けれどもう、出発の時だ。
扉に鍵をかけ、カチリと音が鳴ると、
今までの緊迫感があった雰囲気が糸を切ったように切れた気がした。
僕は隣の建物に立ち寄り、店の持ち主に鍵を手渡す。
利用料金は前払いで先に渡してある。
簡潔なやり取りを終えて、僕は再び歩き出した。
次に向かうのは
——————— 我々国の城。
石造りの威厳ある門の前に立つと、門番が2人立っていた。
彼らはすぐに僕に気づき、黙って門を開けた。
その様子を見て、あらかじめ僕の来訪を知っていたようだ。
おそらく 依頼者が、あらかじめ話を通していたのだろう。
浅く会釈をし、僕は城の敷地へと足を踏み入れた。
広い中庭を抜け、永遠と続いていそうな石畳を進んでいく。
まあ、ハッキングしたため中の構造は把握しきっているのだがな。
城内に入ってから不思議なことに誰の姿も見かけなかった。
人の気配がしないわけではない。
どこか遠くの廊下で、足音のようなものがかすかに響く時もある。
そして、誰にも呼び止められず、誰の視線も感じないまま、目的地へと向かう。
昨日、依頼をしてきたあの人物――グルッペンは帰り際に僕にこう告げた。
「明日、朝十時に、第一会議室に来てくれ」と。
ここで、どんなことが起こるのか。
内心、僕はワクワクしていた。
会議室の前に立ち、取っ手に手をかける。
重厚な扉をゆっくりと押し開けた瞬間、静寂が崩れる。
中にはすでに一人、昨日、本屋に現れたあの男がいた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。