球団事務所にて。
新シーズンの始まりを前に、剛くんは球団スタッフと
並び、穏やかに、でも少し緊張を隠せない面持ちで
話していた。
「剛、本当に大丈夫? 発表って…相当な反響あるよ」
「うん。でも、伝えたいんだ。ちゃんと、俺の言葉で」
私も隣で小さく頷き、
ふたりで決めたこの日を、ただ前を向いて待っていた。
午後6時、球団公式と剛くんの公式SNSから
一斉に投稿がアップされた。
「いつも応援してくださっている皆さまへ」
「私事ではありますが、このたび結婚いたしました」
「これからもプロ野球選手として全力を尽くすと
ともに、1人の夫としても責任を持って歩んでいきます」
「彼女(妻)は、ずっと支えてくれていた存在です。
隠していたこと、すみません。でもようやく、
堂々と紹介できる日が来ました」
「どうかこれからも温かく見守っていただけたら
嬉しいです」
松本 剛
その文面には、奇をてらうことのない、
剛くんらしいまっすぐな想いが込められていた。
発表直後、SNSは瞬く間に大きな話題に。
「うそ、剛くん結婚!? でも幸せそうで安心した…!」
「ショックだけど…ずっと支えてくれてた方なんだね。おめでとう」
「あの時期の打撃好調、考えたら納得する。」
「剛くんの言葉、素直で涙出た。
これからも応援するよ!」
涙交じりの応援や、驚きの声、
そして「剛くんなら幸せになってほしい」と
心からの祝福が少しずつ、確実に届いてきた。
発表の数日後、
遠征先の球場で、選手たちがふたりを取り囲む。
「ついに出したかー!」
「お前ら、ほんと匂わせゼロでよく我慢したな!」
「ちゃんと“結婚しました”って書いてたの、
渋いね。剛らしい」
そして一成さんがぽつりと。
「ずっと本気でしたもんね。俺が保証します。
今の剛さんめちゃくちゃ幸せそうです。」
その言葉に、剛くんは私の手をそっと握りながら、
照れ笑いのような優しい顔を見せた。
後日行われた記者対応では、
はっきりとした口調で剛くんが語る。
「彼女(妻)は、ファンの一人として出会った人です。
でも、いつの間にか“支え”になってくれていました。
ファンの皆さんに隠していたこと、決して嘘を
ついていたわけではなく、守りたかったんです」
「これからは、野球でも家庭でも、全力を尽くします」
その誠実な姿勢に、記者からも静かな拍手が起きた。
「秘密」を守ってきた日々が、
「真実」として伝えられたこの瞬間。
それは決して終わりではなく、
“ふたりの物語の新しいスタート”。
堂々と手を取り合える今、
剛くんもあなたも、
かつてないほど強く、そして深く結ばれていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。