第63話

解禁
65
2025/11/29 07:00 更新
球団事務所にて。

新シーズンの始まりを前に、剛くんは球団スタッフと
並び、穏やかに、でも少し緊張を隠せない面持ちで
話していた。


「剛、本当に大丈夫? 発表って…相当な反響あるよ」


「うん。でも、伝えたいんだ。ちゃんと、俺の言葉で」


私も隣で小さく頷き、
ふたりで決めたこの日を、ただ前を向いて待っていた。


午後6時、球団公式と剛くんの公式SNSから
一斉に投稿がアップされた。


「いつも応援してくださっている皆さまへ」
「私事ではありますが、このたび結婚いたしました」
「これからもプロ野球選手として全力を尽くすと
ともに、1人の夫としても責任を持って歩んでいきます」
「彼女(妻)は、ずっと支えてくれていた存在です。
隠していたこと、すみません。でもようやく、
堂々と紹介できる日が来ました」
「どうかこれからも温かく見守っていただけたら
嬉しいです」

松本 剛


その文面には、奇をてらうことのない、
剛くんらしいまっすぐな想いが込められていた。


発表直後、SNSは瞬く間に大きな話題に。


「うそ、剛くん結婚!? でも幸せそうで安心した…!」

「ショックだけど…ずっと支えてくれてた方なんだね。おめでとう」

「あの時期の打撃好調、考えたら納得する。」

「剛くんの言葉、素直で涙出た。
これからも応援するよ!」


涙交じりの応援や、驚きの声、
そして「剛くんなら幸せになってほしい」と
心からの祝福が少しずつ、確実に届いてきた。


発表の数日後、
遠征先の球場で、選手たちがふたりを取り囲む。


「ついに出したかー!」

「お前ら、ほんと匂わせゼロでよく我慢したな!」

「ちゃんと“結婚しました”って書いてたの、
渋いね。剛らしい」

そして一成さんがぽつりと。


「ずっと本気でしたもんね。俺が保証します。
今の剛さんめちゃくちゃ幸せそうです。」


その言葉に、剛くんは私の手をそっと握りながら、
照れ笑いのような優しい顔を見せた。


後日行われた記者対応では、
はっきりとした口調で剛くんが語る。


「彼女(妻)は、ファンの一人として出会った人です。
でも、いつの間にか“支え”になってくれていました。
ファンの皆さんに隠していたこと、決して嘘を
ついていたわけではなく、守りたかったんです」
「これからは、野球でも家庭でも、全力を尽くします」


その誠実な姿勢に、記者からも静かな拍手が起きた。


「秘密」を守ってきた日々が、
「真実」として伝えられたこの瞬間。

それは決して終わりではなく、
“ふたりの物語の新しいスタート”。

堂々と手を取り合える今、
剛くんもあなたも、
かつてないほど強く、そして深く結ばれていた。

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