side.田中樹
俺らの準備が終わって“さぁ行こう!!”って時に何か思い出したかのように歩みを止めた日向さん。
何!?また!?みたいな顔をしてジッと日向さんの顔を見る俺ら5人。
みんな“やっぱりまたか……”みたいな顔してるし…
先住民って…w
歴史の授業以外じゃ聞いたことない言葉だよそれ。
同い年の子いるの!?
めっちゃ嬉しいんだけど!!
ここにいる4人は全員俺より年上か年下かだから…
唯一の同い年が出来るなんてめっちゃ嬉しい!
訳あり?
何かあったのか?その子に。
ふーん、そんなこと言われたんだ…
さっき言ってた佑也さんって人が俺らで言う日向さんのことだよね。
そんな人がわざわざ伝えてくるなんて…
本当に訳ありなんだな…
まぁ俺らってTHE うるさい集団って感じだしな。
多分その子俺らみたいな雰囲気の奴に慣れてないだろうし…
おそらく…てか絶対怖がらせるだろ。
第一印象ヤンキーの俺らを何故その子と会わせようとしたんだ…
意味不明だ…
その声にパッと前を見ると高級そうな車が止まっているのが見えた。
もう日向さんとはお別れなんだな…
そう思うと寂しくなる。
なんだかんだ言って日向さんはいつも助けてくれた。
だからこそ、俺らも日向さんの負担にならないように行動してた。
でも日向さんは
「迷惑をかけることがお前らの使命なんだから変な気づかいすんな」
って…
そこからかな。
俺らが日向さんのことを本気で信用するようになったのは。
大人を信用出来なかった俺らに“愛情”を教えてくれた日向さん。
俺らの初めての大人の家族。
そんな人とお別れしなくちゃいけない。
その事実が、少し苦しかった。
……これが、俺らの精一杯。
俺らが日向さんに返せる俺らからの愛情。
驚きに目を見開いていた日向さんが優しく笑う。
そう言って嬉しそうに笑った彼の笑みを、俺は一生忘れられないだろう。
俺に愛情を教えてくれた初めての優しい大人。
それが日向さんで、本当によかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。