前の話
一覧へ
白石玲央 , 21歳
わたしの人生を一言で表すなら
「 パッとしない 」
—— いや ハッキリ言うと
「 最悪 」 だった 。
鏡に映る自分の顔が大嫌い
この顔のせいで性格もジメジメと暗くなり
友達はゼロ 。
職場でも 「 あの子 なんか喋りづらいよね 」
と腫れ物扱いされ , いじめとまでは
いかなくても , 綺麗に避けられる毎日 。
そんなわたしの唯一の現実逃避が
画面の中でキラキラ輝く
韓国のアイドルを見ること 。
そして , 幼少期から唯一続けている
ダンスを踊ること 。
ステップを踏んでいる間だけは
自分が醜い現実を忘れられた 。
でも 踊り終わって鏡を見れば ,
そこにいるのはやっぱり冴えない自分 。
運動も勉強もダメ 。
わたしを愛してくれるのは
世界でたった2人 , 不器用で優しい
両親だけだった 。
なのに 。
職場に届いた , 病院からの1本の電話 。
這う這うの体で病院へ駆けつけた時
待合室の白いシートに横たわる2人は ,
もう冷たくなっていた 。交通事故だった 。
帰り道 どうやって歩いたのかも覚えていない
涙が溢れて , 視界がぐしゃぐしゃだった 。
一度深呼吸をして 「 泣き止まなきゃ 」
と思っても , 2人の笑顔を思い出すと
また涙がボロボロと溢れてくる 。
その繰り返し 。
心にぽっかりと
巨大な穴が空いたような絶望の中 。
赤信号の横断歩道に ,
フラフラと足を踏み出していた 。
( キィィィィィィィッ !!! )
けたたましいブレーキ音 。
視界を覆う , トラックのヘッドライト 。
激しい衝撃の後 , わたしの意識は
真っ暗な闇に落ちていった 。
…… ん ?
なんだ , この緊張感のないマヌケな声は 。
次に目を覚ました時
そこは見知らぬ部屋だった 。
カーテンの隙間から ,
やわらかな真昼の光が差し込んでいる 。
焦って声をあげようとしたが
「 う , あー ! 」 と赤ちゃんのような
声しか出ない 。
手足をバタバタさせようとしても
自分の意志に反して短くて肉厚な手足が
もぞもぞ と動くだけだ 。
視線を必死に下に落とす 。そこにあったのは
信じられないほどもちもちとした
クリームパンのような幼児の腕 。
パニックになりかけるわたしを ,
誰かがひょいと抱き上げた 。
優しそうな女性の声 。
抱き抱えられたまま , 部屋の隅にある
大きな姿見の前を通りかかる 。
その瞬間 , わたしは鏡の中の
「 それ 」 と目が合った 。
そこに映っていたのは
色白で 信じられないほど もちもちの肌 。
こぼれ落ちそうなほど大きくて
きゅるんとした , 少女漫画から
飛び出してきたような黒目 。
まだ髪の毛も薄い赤ん坊だというのに
すでに将来 「 絶世の美女 」
になることが確定している ,
神の最高傑作のような顔面 。
ねぇ 待ってよ 。もしかしてこれって
" 転生 " ってヤツ …… ??
しかも 。
あの不細工な自分はどこへやら
鏡の中にいる 規格外のポテンシャルに
わたしの脳は一瞬でキャパオーバー 。
わたしはそのまま , 大きい瞳を閉じ
再び深い眠りへと落ちていった 。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⤿












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!