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第53話

楽園 その4
719
2026/04/04 13:28 更新
【髙地】


お前に触れているときだけは

お前に触れられているときだけは

面倒な肩書はすべてベッドの下にかなぐり捨てて

俺は、ただの髙地優吾だった。

お前も、たぶん…

ただのジェシーだった。





「こーち、大丈夫?…つらくない?」

汗で額に張り付いた前髪をそっとかき上げてくれる。

「大丈夫…、そんなヤワじゃねーよ」

少し上がった息を整えながら
俺の上であまりにも心配そうな顔をするジェシーに
思わず笑ってしまった。

「なんで笑うの!」

「だって笑、そんな顔すんなって、それより重い」

「あ、ゴメン」

慌てて俺の横にころりと転がる。

「ジェシー…」

「なに…?」

名前を呼んだら、長い腕が伸びてきて
優しく抱きすくめられる。

「これ、気持ちいいな」

「ぎゅってするの?」

「うん」

生まれたままの姿で、ジェシーと抱き合える幸せ。

幸せだと思ってしまったことに

涙が出た。



「こーち…?」

「なんでもない、このまま寝よう、ジェシー」

「いいよ、こーちもぎゅってして?」

「うん」

両手をジェシーの背中に回して
隙間なく、ぴったりと抱き合う。

「おやすみ、こーち」

「…おやすみ、…ジェシー」

真っ白なシーツの上

ふたり体温を分け合いながら
ゆっくりと目を閉じた。





初めてお前の胸に顔を埋めたとき

遠くに、終わりの始まりを告げる鐘の音が聞こえて

終わるなら

この楽園と決めた。









end

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