放課後の帰り道は、明るいはずなのにどこか薄暗く見える。
校門を出ると同時にスカートの裾を握りしめ、小さく息を吐いた。
今日もなんとかやり過ごした...
教室のざわめきも、視線も、笑い声も、全部苦手。
誰とも深く関わらないように、存在を薄くして過ごす毎日。
自分でも“暗い”とわかっている。それでいい──そう思っていた。
けれどその日、私の薄い日常は唐突に破られた。
住宅街の裏路地。
学校帰りの私が、普段絶対に通らない近道を選んでしまったのは、ただ疲れていたから。
風に乗って漂ってくる鉄臭い匂いに足が止まる。
路地の奥に、黒い影。
人影のようで、人じゃない何か。
逃げなきゃ、と思うのに身体が動かない。
声を出そうとしても喉が固まる。
その瞬間
鋭い声と同時に、私の腕を後ろから掴む大きな手。
引き寄せられ、身体が弾かれるように後退した。
着地した視界の先。
黒いスーツの男が、銃を構えて私の前に立っていた。
泣き出しそうになるほど整った顔立ち。
無機質で冷静な瞳。
どこか影を抱えたような雰囲気。
──早川アキ。
私はその名前を知らない。
ただ、彼の纏う空気が普通じゃないことだけは直感で理解した。
淡々とした声で告げると、アキは奥の“ソレ”へ向き直る。
指を鳴らし、空気が裂けるような音が響く。
一瞬で路地が灰色に染まり、悪魔の悲鳴が掻き消える。
私はただ震えて、息をすることしかできなかった。
戦闘が終わっても、アキの目は警戒を解かない。
けれど血のついた手で私に触れようとはしない。
その不器用な優しさが胸に刺さる。
掠れた声で返すと、アキはわずかに眉を寄せた。
そう言って、アキは私の肩にそっと手を置く。
意外にも温かい。
その温度にほっとした途端、涙が滲む。
きっぱりと言い切るアキ。
断れない雰囲気なのに、嫌じゃない。
むしろ、胸の奥が少しだけ軽くなる。
歩きながら、私はふと口を開いた。
すぐに返ってきた冷たい言葉。
だけどその後、ふっと声が低くなる。
足が止まった。
アキは気づいていないのか、わずかに前を歩いていく。
胸の奥が、ざわざわと騒ぎだす。
恐怖の残滓とは違う、もっと柔らかい何かが。
...この人、怖いのに、優しい
初めて会ったばかりなのに、妙に気になる。
チェンソーマン新作出してしまいました!
ぜひお楽しみください!
前作↓












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。