夢を見ていた。
フレッドがいる。
僕を見て笑っている。
「おい、ジョージ、笑えよ、お前も」
そう言いながら。
でも、僕がそっちへ踏み出そうとすると、怒った顔をするんだ。
「ダメだ、こっちに来ようとするな。
お前、店はどうしたんだ?あんなに試作品が残ってるじゃないか。
お前、大切なものを忘れたのか?まだそっちにあるだろ。
ジョージ。…お前、最後くらい"兄さん"の言うこと、聞いてくれよ」
そして、目が覚めた。夢だとわかっていた。フレッドはもう、いないんだもの。
「お前、わざわざそれ言いにきたのかよ」
呟きながら眺めた天井は、懐かしくも見慣れた景色だった。隠れ穴だ。
「…ジョージ?」
そして、彼女の声が聞こえた。彼女の声だけが、俺の中に響いた。
「…アンジェリーナか?」
フレッド、ごめんな。フレッド、ありがとな。
「ジョージ、目が覚めたのね?」
アンジェリーナが顔を覗き込んでくる。
「あぁ、お陰様で」
彼女は瞳を輝かせた後、すぐに踵を返そうとした。
「みんなを呼んでくるわ。特にお母さんとパーシー、心配してるわよ」
そうして背中を向けかけた彼女に言った。
「俺、店を開けるよ」
我ながら唐突な宣言だ。けど、こちらをも振り向いた彼女の瞳は、さらに輝いていた。
「本当に?!あぁ、よかった、やるのね!」
やっぱり、綺麗だ。そう思いながら、言葉を続ける。
「ああ。試作品がまだ残ってるからね」
フレッドの言葉を思い出していた。アンジェリーナは再び言った。
「みんなを呼んでくるわ。それを伝えたら、きっと喜ぶわ!」
「あぁ」
彼女の背中を見送ってから、フレッドの言葉を思い出していた。
____なぁ、フレッド。
店は、続けるよ。お前の言う通り、試作品はまだまだあったな。さて、誰を実験台にしたものか。
大切なものだって、見つけたさ。お前と同じくらいのをさ。けどお前、いいんだな?あとで返せったって、知らないぞ。
ああ、いいさ。ふざけた"兄さん"の言うことだって、聞いてやるよ。…いい報告待ってろ。
__完__











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!