朝の教室は、ざわめきと笑い声で満ちていた。
その中心にいるのは、やはりSnow Man。
何気ない会話さえも、彼らが口にすればクラスの空気は華やぐ。
――少なくとも、表面上は。
夢主が席についた瞬間、机の中から紙切れがひらりと落ちた。
拾い上げると、そこには黒いペンで乱雑に書かれた文字。
《消えろ》
息が詰まる。心臓が小さく跳ね、手が震える。
だが、顔を上げても誰もこちらを見てはいない。
ただ、Snow Manのひとりが窓際でクスリと笑い、仲間と目を合わせていた。
授業が始まっても、集中できない。
ノートを取ろうとしたペンはインクが抜かれていて、教科書は机から消えていた。
「忘れたの?」と教師に冷たい視線を向けられ、クラスの後ろで小さな笑いが広がる。
放課後。昇降口の隅で、夢主はじっと靴箱を見つめていた。
扉を開けると、泥水が流れ出す。白い上履きは汚れに沈み、使いものにならなくなっている。
声が喉までせり上がるが、出なかった。
背後から、また笑い声。振り返れば、Snow Manの影。
彼らは何事もなかったかのように肩を並べて歩き去っていく。
その夜。
夢主は机に向かい、震える手でノートを開いた。
「雪」「氷」「檻」――
ページの片隅に何度もその文字を書き殴る。
やがて、ふと鏡を見る。
映っているのは、昼間に嘲笑を浴びせられた少女ではなかった。
瞳の奥に、冷たい光が宿っている。
呟きは静かで、けれど確かに鋭く響いた。
心の奥で、氷がゆっくりと形を成していく――。
第二話終













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!