鳴海 side .
その後、リビングへと顔を出したシロは怯えきった顔をしていた。自分の携帯のメモアプリを開き『さっきはごめんなさい』と書いた画面を見せる。
ごめんなさい。追い出さないで。そんな顔で。
さっき? と首を傾げた。
思い当たるとしたら、枕を投げた事だろうか。気にしていないと言っても怯えたままで、視線を合わせるとビクリと震えて俯いてしまった。
今までどんな扱いを受けてきたのか、嫌でも察した。それなら、ここではとことん甘やかしてやりたい。柄にもなくそんな気持ちが沸き起こる。
子供にするように頭を撫でる。だが、それでもまだ怯えたまま。さて、どうしたものか。思案して。
まさかそんな事を言われるとは思わなかったのだろう。怯えた顔で俯いていたシロは、ビクッと肩を震わせる。
そしてますます俯いたのだが、残念ながら真っ赤な耳を隠せていない。
耳に手を伸ばしかけて、やめた。
今は意識がはっきりしている。寝惚けていないシロはまた怯えてしまうかもしれない。
今は自分の欲より、シロの信頼だ。
ポンと頭を撫でて笑えば、よくやくシロの体から力が抜けた。
仕事から帰ったのは深夜二時過ぎだった。
シャワーを浴び、昨日同様リビングのソファに横になり目を閉じる。
ウトウトし始めた頃、ふと気配を感じた。
目を開けると、すぐ傍にシロの顔があった。
ソファの前に屈み、ちょこんと座っている姿は可愛い。
だが、目を開けてすぐ、薄暗い中で無言でジトッと見つめられていてはさすがに驚いてしまう。
だがそれを見せるのも格好悪くて、何でもないように体を起こす。シロは不思議そうな顔をしていた。そして、鳴海の袖を遠慮がちに引っ張る。
きちんと言葉の意味に気付いたシロは、パッと袖から手を離してふるふると首を横に振った。
今朝あんな事をされたというのに、もう忘れているとは。やはりシロは天然らしい。
あたふた、おろおろ。可愛い仕草をするシロ。
......猫は良い。仕事疲れを吹き飛ばしてくれる。のんびり眺めていると、やっぱりベッドで寝て、と言うように遠慮がちに袖を引いた。
それが単なる気遣いだという事は分かる。信頼関係は大事だという長谷川の言葉もきちんと思い出した。
だが。
今はこちらが正解だろう。立ち上がり、シロの腰を抱く。
そんなつもりじゃない、と見上げて戸惑った顔をするが、もう遅い。
震える両手で口を押さえ、懸命に声を殺す。
最初の時もそうだった。シロは、頑なに声を抑えようとする。あの時はただ恥ずかしがっているだけかと放っておいたが......。
やはり声を聞きたい。
緩く腰を揺らしながらシロの手に触れても、それだけは、と言うように泣きそうな顔をして、ふるふると首を横に振った。
前回は負担が少ないよう俯せの体勢にさせたが、今日は仰向けだ。それでも懸命に声を抑えようとする。
顔が見える体勢に、嫌だ、と視線は揺れたのに、シロは言葉にする事なくされるがままに従った。
あまりにも、従順。
そう躾蹴られたのだろうか。例の、連絡待ちの男に。
......いや、違う。先程自分が、何をされても文句を言うなと言ったせいだ。シロはそれに従っているだけ。
胸に嫌な靄が広がり、そっと息を吐いた。
本当は、ここまでする気はなかった。それでも、体を繋げれば少しは遠慮はしなくなるかもしれない。そう思った。今までの相手は、そうだったから。
求められていると、必要とされていると、そう感じればシロも少しは安心するかもしれないと思ったのだが......。
と言っても、それでもやはりギュッと口を押さえてしまう。
男の声が萎えるだとか言われたトラウマかと思っていたが、そうではないようで。一体何がそんなにシロを頑なにさせるのか。
腰を止めると、シロは顔を青くする。
微かに声を零し、だがやはり、ぶんぶんと首を横に振って意思表示をした。そして、もっと、というように自ら腰を揺らす。
顔色を窺って、怯えて、体を差し出して。涙も零す事も耐えようとする。
本来なら、こんな合意とは言えない行為は好まない。だが、今日だけは特別だ。
そう言って、目元にキスをする。ニッと笑ってみせると、シロは丸い目を瞬かせて鳴海を見上げた。
その瞼に、頬に、少し迷ってから、唇へと啄むようなキスをする。
どうして。シロの瞳が戸惑いに揺れた。
シロはこういった触れ合いに慣れていないようだった。今までどんな男に引っかかって来たのか、優しく抱かれた事がないのかもしれない。
最初の時からそうだった。キスすらも慣れない様子で、ただ挿れられる事しかなかったような......。
胸の中心で主張する粒へと舌を這わせると、シロは身を捩り高い声を上げた。だがそれも一瞬の事。震える手が懸命に口を押さえる。
構わずに舌を這わせ、もう片方は強めに摘む。緩く腰を揺らしながら、固くなった尖りにねっとりと舌を這わせてやると、快楽から逃れようと身をくねらせた。
真っ白なシーツの上で乱れる姿が、あまりに淫らで......。
白く滑らかな肌。綺麗な体を汚す背徳感に、ゾクリと背筋が震えた。
最初の時はがっついてここはろくに触ってやれなかったが、どうやらシロはここが弱いらしい。強めに吸い上げるだけで下肢からとろりと蜜が溢れる。
執拗に弄っていれば、啜り泣くような声に変わった。
嫌だ、と無意識に横へと振られる首。蕩けた瞳が罪悪感を伴ってぼろぼろと涙を零す。
これ以上は無理か。そっと息を吐いた。
与えられる快楽を今のシロは受け入れきれない。それを悪い事だと教えられたように。
会ったばかりの男からされるとなると、泣き出すのも仕方がなかった。
ただ鳴かせたいだけで、怯えさせて泣かせたいわけではない。
涙に濡れる目元へと唇を触れさせ、そっと頬を撫でる。零れ続ける涙を指先で拭うと、ゆっくりと瞼が開いた。
動くぞ、と示すように腰に触れる。するとシロ安堵したように頷いた。
腰骨を掴み、一気に奥を穿つ。
奥と、浅い場所。感じるところばかりを狙い固い先端で突く。その度にシーツの上で白い体をくねらせ、自身からは軽く精が吹き出した。
そのうちに瞳を蕩け、もっと、と熱を孕んだ視線が向けられる。
痛いくらいに奥を穿ち、激しく揺さぶる。肉のぶつかる音と、卑猥な水音。乱暴にするほど、シロは安堵した表情を見せた。
達しないよう自身を掴む手。その手を離させようとすると、ますます力を込めてしまう。仕方なく今はシロのしたいようにさせた。
本当は、どろどろに甘やかしてやりたいけど......。
自分の下で快楽に溶ける媚態を見下ろす。
本当は、その手で抱きついて欲しい。声を上げて悦がり狂う姿を見せて欲しい。
だが、こんなになっても懸命に声を抑えようとするシロを見ると......。
今日は少しだけ、声が聞けた。それで良しとしよう。そんな気持ちになる。
耳元で囁き奥を抉ると、自身を掴んでいた手がパタリとシーツに落ちる。そして声なき悲鳴を上げ、絶頂を迎えた。
背を撓らせるシロの絡みつく内壁に絞め付けられ、鳴海も薄い膜の中へと精を放った。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。