第18話

you 9。
500
2020/06/13 13:26
私は倒れる直前の頭痛で断片的ではあるけど

記憶を取り戻した。

私は確かに、中学の校外学習で"彼"と一緒にいた。


"彼"とは私が記憶を失った日から

時々夢に現れる男の子。

私は一緒にいた記憶はないのに、

何故か彼のことを知っている。


"彼"は中学の時の私の好きな人なのかもと思ってる。

薄れていく記憶の中でそんな彼と

うらた君がピッタリと重なった。

それに普段は名字呼びなのに

あの時だけ名前で呼んでたし。

何か知ってるのかも…。
(なまえ)
あなた
…ねぇ、うらた君。
高校より前に私と会ったこと、ある?
うらたぬき
うらたぬき
え……?
思い切って聞いてみることにした。
うらたぬき
うらたぬき
え、マジ…俺……覚えて…?
…。……いつ、どこで…?
うらた君は大慌てした後冷静になって聞いて来た。

この反応からして会ったこと、ないか…?

やっぱそんな訳ない、よね……。
(なまえ)
あなた
あー、えーっと……ごめん!
何でもない!この話は忘れて‼︎
私はもう大丈夫だから行っていーよ!
はい!バイバイ‼︎
恥ずかしさを掻き消すために

うらた君を立たせて自分も立ち上がり

ドアを開けて追い出した。

真実の知りたさから焦ってしまった…。
(なまえ)
あなた
…はぁ。やっちまった……。
あの反応はドン引きだったよね…?

何言ってんだコイツ、的な。

うわあああああああ。

私がベットの前にぺたんと座り込んで

しばらくすると保健の先生が帰って来た。

保健の先生「あら?こんなとこに…どうしたの?」
(なまえ)
あなた
……別に。


そして修旅最終日。

色々あったけど楽しかったなー…。
うらたぬき
うらたぬき
紫薔薇さんおはよー!
もう具合は良さそ?
(なまえ)
あなた
おはよ。…うん。大丈夫。
昨日は本当にありがと。
うらた君は一昨日の朝に戻ったような

元気な挨拶。

そして昨日の私の失態は気にしないで

いてくれてるようだ。


今日はお土産を買うためショッピングモールに

寄りつつ帰るだけ。

昨日も買うことは出来たが、

私はそれどころじゃなかったし。
うらたぬき
うらたぬき
うわー、家に部活に……
色々買わないといけねーじゃん!
私の横でお土産に悩む余り

周りに人がいるにも関わらず、

そこそこの声量で叫ぶうらた君。

彼は人気者だから交友関係も広い。

沢山の人にお土産を買わないといけないのだろう。

しかし昨日は私の面倒を見てたことによって

お土産は当然買えてない。

今日全て選ばないといけないから

頭を悩ませている、のだと推測する。
(なまえ)
あなた
えっと…誰に買う予定なの?
うらたぬき
うらたぬき
ん?もしかして紫薔薇さん、
一緒に選んでくれんの⁉︎
(なまえ)
あなた
……昨日。迷惑、かけたし…。
いくらうらた君が底抜けに優しくて良い人でも

倒れて運んでもらって看病される…。

そんな迷惑をかけて何もしない訳にはいかない。

こー見えて私は元真面目だけあって義理堅い。

私はお父さんと坂田君以外に

特にお土産を渡す予定がなく、

買うのに時間の掛からないので手伝える。
うらたぬき
うらたぬき
俺は全然気にしてないけど……
坂田のとかもあるから一緒に選ぶか!
(なまえ)
あなた
…!うん…!
嬉しさが顔に滲み出ているような

笑顔のうらた君が私の心に刺さる。

もちろんうらた君と"彼"が

同一人物かもしれないことは気になる。

中学時代の思い出を取り戻すきっかけが

掴めるかもだし。

でも今はうらた君とお土産を選ぶのが楽しい。

この目先だけの楽しい嬉しいの感情だけでも

いいのかもと思えた。

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