私は倒れる直前の頭痛で断片的ではあるけど
記憶を取り戻した。
私は確かに、中学の校外学習で"彼"と一緒にいた。
"彼"とは私が記憶を失った日から
時々夢に現れる男の子。
私は一緒にいた記憶はないのに、
何故か彼のことを知っている。
"彼"は中学の時の私の好きな人なのかもと思ってる。
薄れていく記憶の中でそんな彼と
うらた君がピッタリと重なった。
それに普段は名字呼びなのに
あの時だけ名前で呼んでたし。
何か知ってるのかも…。
思い切って聞いてみることにした。
うらた君は大慌てした後冷静になって聞いて来た。
この反応からして会ったこと、ないか…?
やっぱそんな訳ない、よね……。
恥ずかしさを掻き消すために
うらた君を立たせて自分も立ち上がり
ドアを開けて追い出した。
真実の知りたさから焦ってしまった…。
あの反応はドン引きだったよね…?
何言ってんだコイツ、的な。
うわあああああああ。
私がベットの前にぺたんと座り込んで
しばらくすると保健の先生が帰って来た。
保健の先生「あら?こんなとこに…どうしたの?」
そして修旅最終日。
色々あったけど楽しかったなー…。
うらた君は一昨日の朝に戻ったような
元気な挨拶。
そして昨日の私の失態は気にしないで
いてくれてるようだ。
今日はお土産を買うためショッピングモールに
寄りつつ帰るだけ。
昨日も買うことは出来たが、
私はそれどころじゃなかったし。
私の横でお土産に悩む余り
周りに人がいるにも関わらず、
そこそこの声量で叫ぶうらた君。
彼は人気者だから交友関係も広い。
沢山の人にお土産を買わないといけないのだろう。
しかし昨日は私の面倒を見てたことによって
お土産は当然買えてない。
今日全て選ばないといけないから
頭を悩ませている、のだと推測する。
いくらうらた君が底抜けに優しくて良い人でも
倒れて運んでもらって看病される…。
そんな迷惑をかけて何もしない訳にはいかない。
こー見えて私は元真面目だけあって義理堅い。
私はお父さんと坂田君以外に
特にお土産を渡す予定がなく、
買うのに時間の掛からないので手伝える。
嬉しさが顔に滲み出ているような
笑顔のうらた君が私の心に刺さる。
もちろんうらた君と"彼"が
同一人物かもしれないことは気になる。
中学時代の思い出を取り戻すきっかけが
掴めるかもだし。
でも今はうらた君とお土産を選ぶのが楽しい。
この目先だけの楽しい嬉しいの感情だけでも
いいのかもと思えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。