_ねぇ、貴方は今どこで泣いていますか?
君と初めて会ったのは、1年前、高校1年生の春。
桜の花が少しずつ降っていた頃だった。
その日は、高校に入ってすぐの週末。
隣の市にいる祖母と少し遅めのお花見をしようと、家族と話していた。
僕の家族は、両親と僕の3人家族だ。
祖母の家に着き、車を停めて、4人で桜並木がある場所まで歩いた。
「冬和ちゃんは、高校生かい?」
「うん、そうだよ。高校1年」
「大きくなったねぇ」
【冬和】それが僕の名前。
僕は祖母から、ちゃん付けされているが男だ。
まぁ、女の子っぽい名前だけど。
桜が散り始めているからか、あまり人はいなかった。
家族連れや、カップルがちらほらいるだけ。
(あれ……)
ふいに顔を桜から道の通りに目を移すと、1人の女の子が目に入った。
遠くからでも分かる。
綺麗な子だと思った。
目を離せないくらいに。
「あ…」
よく見ると、女の子は涙を流していた。
僕は、それに引かれたように走り出していた。
学校も違う。名前も知らない。
きっと他の人は、ほっておくのだろう。
僕が、その“他の人”なら、そうしていた。
でも、ここで見て見ぬふりをしたら、ダメな気がして。
例えば、小さな子供がひとりで泣いていたら?
通り過ぎる?それとも、話しかけて話を聞く?
殆どの人が後者だろう。
僕のこれは、それと一緒なのだ。
「ハァハァ…ね、君」
「…え……私?」
「そう、君。どうしたの?」
「大丈夫、です!すみません、目にゴミが入っちゃって」
あぁ、この笑顔は嘘だ。
確証はない。
でも、そこに触れたらダメだと思った。
「そっか!」
ん?待てよ?
「…あ!!」
「え?」
「ごめんなさい!!」
「んっ?!なっ、何が…ですか?」
「敬語!使ってなかったです。ごめんなさい……」
頭を下げると、少しして、小さな笑い声が聞こえてきた。
恐る恐る顔を上げると、女の子は、
「いいですよ、そんなこと。」
そう笑いながら許してくれた。
「多分、同い年くらいじゃないですかね?いくつですか?」
「…あ、15です。高校1年……」
「ほんとに同い年だ!…敬語、外していいですよ」
「でも……」
女の子だって敬語なのに、それはいいのだろうか。
「私も、敬語外すから」
「…分かった。そういえば、名前。聞いてなかったし、教えてなかった。僕は」
「言わないで」
「え?」
「私も言わない」
「あっ、そうだよね!今、会ったばっかのやつに教えたくないよな」
「あぁ〜、そうじゃなくて…どこの人?ここの市の人?」
「隣の市だよ」
「じゃあ、来年」
「来年?」
「来年も来る?」
「うん、来るよ」
「来年のこの時期。来て。そしたら、教えてあげるよ。“気分だったら”」
思わず笑ってしまった。
「ははっ…なんだよ、それ。」
これが、名前の知らない君との出会いだった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!