第2話

「名前を知らない花」
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2021/12/29 04:59 更新

_ねぇ、貴方は今どこで泣いていますか?






君と初めて会ったのは、1年前、高校1年生の春。
桜の花が少しずつ降っていた頃だった。



その日は、高校に入ってすぐの週末。

隣の市にいる祖母と少し遅めのお花見をしようと、家族と話していた。


僕の家族は、両親と僕の3人家族だ。

祖母の家に着き、車を停めて、4人で桜並木がある場所まで歩いた。


冬和トワちゃんは、高校生かい?」

「うん、そうだよ。高校1年」

「大きくなったねぇ」


冬和トワ】それが僕の名前。

僕は祖母から、ちゃん付けされているが男だ。

まぁ、女の子っぽい名前だけど。


桜が散り始めているからか、あまり人はいなかった。

家族連れや、カップルがちらほらいるだけ。


(あれ……)


ふいに顔を桜から道の通りに目を移すと、1人の女の子が目に入った。

遠くからでも分かる。

綺麗な子だと思った。

目を離せないくらいに。



「あ…」

よく見ると、女の子は涙を流していた。

僕は、それに引かれたように走り出していた。

学校も違う。名前も知らない。


きっと他の人は、ほっておくのだろう。

僕が、その“他の人”なら、そうしていた。

でも、ここで見て見ぬふりをしたら、ダメな気がして。


例えば、小さな子供がひとりで泣いていたら?

通り過ぎる?それとも、話しかけて話を聞く?

殆どの人が後者だろう。

僕のこれは、それと一緒なのだ。



「ハァハァ…ね、君」

「…え……私?」

「そう、君。どうしたの?」

「大丈夫、です!すみません、目にゴミが入っちゃって」

あぁ、この笑顔は嘘だ。

確証はない。

でも、そこに触れたらダメだと思った。

「そっか!」


ん?待てよ?

「…あ!!」

「え?」

「ごめんなさい!!」

「んっ?!なっ、何が…ですか?」

「敬語!使ってなかったです。ごめんなさい……」



頭を下げると、少しして、小さな笑い声が聞こえてきた。

恐る恐る顔を上げると、女の子は、

「いいですよ、そんなこと。」

そう笑いながら許してくれた。


「多分、同い年くらいじゃないですかね?いくつですか?」

「…あ、15です。高校1年……」

「ほんとに同い年だ!…敬語、外していいですよ」

「でも……」

女の子だって敬語なのに、それはいいのだろうか。

「私も、敬語外すから」

「…分かった。そういえば、名前。聞いてなかったし、教えてなかった。僕は」

「言わないで」

「え?」

「私も言わない」

「あっ、そうだよね!今、会ったばっかのやつに教えたくないよな」

「あぁ〜、そうじゃなくて…どこの人?ここの市の人?」

「隣の市だよ」

「じゃあ、来年」

「来年?」

「来年も来る?」

「うん、来るよ」

「来年のこの時期。来て。そしたら、教えてあげるよ。“気分だったら”」

思わず笑ってしまった。

「ははっ…なんだよ、それ。」




これが、名前の知らない君との出会いだった。

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