おらふくんside
少し暑くなってきた晩春。
昔待ち合わせに使ってた駅の近くの花屋さんの店員さんに聞かれた。
花束のお会計中の繋ぎだとは分かっているけど、意識が目の前の人に移る。
「友達宛」
ぼくはおんりーのこと、友達だとは思っていない。
いや、思えなくなってしまった。というのが正しいのかな
空き教室で倒れたおんりーをねこおじさんが運んでったあと、おんりーは、車で病院まで行ったそうだ。
病院で診断されたのは、PTSD。ドズルさんの見立ては正しく、おんりーはぼく達の事がトラウマになったらしい。
相手にトラウマを植え付けた人とは、友達になりたくないやろな…
そう、今おんりーは入院している。
原因は………ぼくらだ。
全部、ぼくらが悪いんだ。
醜い嫉妬をしたぼくも、
向き合うことに逃げてきたMENも、
噂を信じて真実を見ようとしなかったドズルさんも、
周りに流されてばっかなぼんさんも、
全部、おんりーを傷つけていたんだ。
…………立ち直れないくらいに。
友達じゃない、と訂正も出来ずに在り来りな返事をする。
嘘もつけないし、否定もしていない。
悪いことは言ってないはずなのに……
少し、息がしにくくなる。
あぁ、おんりーもこんな気分だったのか。
嘘をつくことも許されず、敵を作らないために本音を隠して建前を吐く。
言うのは簡単だが、実行するのはまた話が違う。
こんなに、苦しいものなんだ……
明るい笑顔を向けてくれる店員さんが、あまりにも眩しくて、花束が入った袋を貰う時に俯いてしまう。
………苦しい。
おんりーは、どんな時でも背筋を伸ばして前を向いていた。
たとえそれが、学校中から陰口を叩かれている時でも。
たった一人で俯いてしまってる自分が情けなくて、さらに背中が丸まる。
会計も終わったから早く店を出たいのに、店員さんが話しかけてくる。
「ありがとうございましたー!」
今度こそお喋りな店員さんに解放されて、少しづつ暑くなってきた外に行く。
ぼくとMENは、この春から三年生になった。
ドズさんは国公立の大学に行って、ぼんさんは俳優になりたいといって、どこかの劇団に入った。
おんりーは、精神病棟の個室から出られないでいる。
ぼくらは、二年前。おんりーに取り返しのつかないことをしてしまった。
いや、取り返しのつくことなんて無い。
そんな簡単なことにも気づかなかった。
ぼくらは、純真無垢というにはあまりにも汚く、狡かった。
関係ないと言い張れるほどぼく達がやってしまったことは小さくなく、責任を取れるほど、ぼくらは大人じゃなかった。
おんりーが気を失って病院に運ばれたあと、病院でねこおじさんに詰められた。
殺される。そう思ってしまうくらい鬼気迫る様子のねこおじさんは、おんりーのことを話してくれた。
……おんりーがぼく達は話してくれなかったことを。
全てを話したあと、ねこおじさんは失望し呆然としていた。
しかし、次の瞬間にはそれすらも上回る怒りに身を任せてあの後何があったのかを話してくれた。
いや、怒鳴ったというほうが正しいんだろう
ねこおじさんから、聞いたことがないような怒声が出てきて、ぼくは肩を震わせることしかできなかった。
「軽度外傷性脳損傷」「解離性健忘」「PTSD」
ぼくたちのせいで、おんりーは上手に生きられなくなってしまった。
一度だけ、おんりーに会いに行ったことがあった。
ねこおじさんから「おんりーの容態が安定した」と連絡が来て、みんなでお見舞いに。
ぼんさんが「おんりーの好きなものを持って行ってあげよう」といって、反対するはずもなくみんなでショッピングセンターに行った。
でも、結局花束だけ買って終わった。
理由は簡単、おんりーの好きなものを誰も知らなかったからだ。
勉強、運動、勉強、生徒会、勉強、勉強。
おんりーのやってることはそれぐらいしか知らなかった。
知ろうとすらしなかった。
唯一の情報が、ドズルさんの「中一の時緑化委員会だった」ということだった。
みんなでおんりーが好きそうな花を選んだ
ぶっちゃけ、みんなただの勘だった。
でも、嬉しかった。
怒鳴られるかもしれない、話してくれないかもしれない。
─────でも、謝れる。また、友達になれるかも。
そう思うだけでどんな罵りも耐えられる気がした。
ぼく達は勘違いしていた。
おんりーはもう大丈夫だと。
また、一緒に笑える日が来ると。


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。