黄色い帽子を軽く被ってふわりと膝丈のスカートを揺らし、この前買ってもらった真っ白のスニーカーで地面を蹴る。森林公園は爆音を鳴らしながら走る車やバイクが通る道路から少し離れてるせいか、心地よい風に揺られる木々の声たちや負けんと鳴く蝉たちの声が聞こえる。よく耳を澄ますと蝉はセミでも、時々聞こえるツクツクボウシやミンミンゼミの声が聞こえるということは、私の住む所は少々田舎なのかも知れない。
そんな自然豊かな公園の近くに1軒、でかでかと構える門を開けて玄関までの庭を軽く走る。暑くて早く涼みたいのもあるが、今日はアレを早く二人に見せたい。
『ただいまぁー!ママ!パパ!』
今思えば平日の昼間に家にいる両親は何をしている人達なのかよく分からなかったが当時の私はそんなこと気せず、むしろいつでも家にいて嬉しかった。
『見て見て!一学期の成績表!』
リビングに向かいながら背負っていたリュックから取り出して、何人掛けだよとツッコミたくなる大きいダイニングテーブルに成績表を広げた。奥の部屋から「何よー?」と言いながら出てきた両親に、ふんっと鼻を鳴らして綺麗に並ぶ 5 の数字を指さす。
『オール5だったよ!5って一番いいんだよね!?』
小学校に入学して初めての勉強。もちろん授業態度や提出物、体育での運動神経の良さも見られるがやっぱり一番は定期的に行われる小テストの点数で決まる。
テストが行われる1ヶ月も前に母親に成績が悪かったら遊びに行くの禁止って言われて小学生のくせにちょっと焦ったけど、何とか乗り切った。
後から知ったことだけど、私が通ってた小学校って私立だったんだって。そりゃ難しかった訳だわ。
とにかく自分は頑張った、慣れない勉強もしていい成績が取れたから、褒められたかった。だけど二人から発せられた言葉は今でも胸の奥深くにくるものがある。
「当たり前じゃないの、うちの子なんだから。そんなくだらない事でママたちを呼ばないで」
「あなた、パパたちは仕事で忙しいんだ。部屋で勉強してなさい」
『…え?』
期待していた反応とは真反対で一瞬言葉が失った。母親はともかく、父親なんて成績のことに一切触れることなく冷たい目をして部屋の奥へ消えていった。母親も続いてはぁと私に聞こえるようにため息をついて父親の後を追った。
バタンといつもより大きな音を立てて閉まったドアでシャンデリアが僅かに揺れる。リビングに残された私はどれくらい立ちすくんだだろう。御盆に菓子折りとジュースを載せてダイニングから出てきた使用人に声をかけられて、やっと我に返った。
「あなたお嬢様?どうされました?」
『……ううん、』
不思議そうにキョトンと首を傾げる使用人。テーブルに広がる成績表に気づいて覗こうとされて、慌てて取ってリュックにしまう。勝手に見てしまって慌てて謝る使用人は深く頭を下げる。
折り目にそらずそのままリュックに突っ込んだ成績表は少し濡れてシワができていた気がする。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。