第20話

なかなか本題に入れない
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2022/09/07 14:17 更新
そういえば、
あなた
LIP×LIPって、なんでLIP×LIPなんですか?
涼海ひより
あ、それうちも思ってたー
純粋な疑問。
今は社長と内田さんに、私、ひより、LIP×LIPの2人が談話室に呼び出されていた。
みんなぼんやりと集まり、ぼんやりとした空気感にちょうど良い話題だと思ったのだが……。
田村社長
実は最初、違う名前も考えていたのよ?
田村社長のこの言葉に、愛蔵と勇次郎は顔をひきつらせる。
あなた
え?2人ともどうしたの?
目をぱちぱちさせ、私は尋ねた。
が、2人は顔をひきつらせたままわざとらしく視線を逸らす。
柴崎愛蔵
い、いや〜??別に、なんでもないけど〜?
涼海ひより
嘘下手か
染谷勇次郎
そ、そうそう。別に田村社長の話なんて聞かなくても……
あなた
めっちゃ聞きたいです!
LIP×LIP
2人がこんなに嫌がる(?)のだからきっと面白い話に違いない!
私は瞳をキラキラ輝かせながら食い気味に聞いた。
田村社長
そう?なら話そうかしら
LIP×LIP
ちょっと待って!
染谷勇次郎
僕らにも話すか話さないか決める権利はあるよね?
柴崎愛蔵
俺らの威厳に関わることだ!
いやそんなに?
私は内心そう思いつつ、断固として言い出さない2人に口をとがらせる。
あなた
良いじゃん!教えてくださいよ!
LIP×LIP
だ・め・だ!
そんなに拒否られると逆に気になるものだよ、2人とも。
私が全く引かないのを理解したのか、愛蔵は溜息をつき口を開いた。
柴崎愛蔵
じゃあお前、なんでそんなに保健室にいきたなかったのか教えろよ
あなた
いいよ
柴崎愛蔵
だろ!俺達もそんな気持ちなんだよ……………………って良いのかよ!?
あなた
良いけど
そう告げる私に、なおも驚いている愛蔵。
私はキョトンとした顔で返す。
あなた
なんで愛蔵が驚いてんの?
柴崎愛蔵
いや、そんなすんなり言われるとは思ってなかったから……
あなた
2人の話を聞けるなら、こんなの安いものだよ
体育祭から帰ってきたあと。
お風呂やらご飯やら疲れやらで結局話せなかった内容を、愛蔵はまだ気になっていたらしい。
染谷勇次郎
あー、保健室に行きたくなかった理由?
涼海ひより
霜花ちゃん、そんなに行きたくなかったん?
柴崎愛蔵
まー、行ったあと、「私、これから保健室に通うね!」←(高音)って言ってたけどな……
染谷勇次郎
何があったの!?
柴崎愛蔵
なんか出会ってはいけない2人が出会ってしまったというか……
涼海ひより
ロミオとジュリエット!?
あなた
シェイクスピア、良いよねー
LIP×LIP
良いけどさ!
和気あいあいと会話を始める私達。
内田マネージャー
社長、早く要件を伝えた方が良いのでは……?(小声)
田村社長
面白いからもう少し見てましょ(小声)
で、
あなた
私が言えば、愛蔵達は教えてくれるんだよね?
柴崎愛蔵
あぁ……
染谷勇次郎
バカ
目先でギロッと愛蔵を睨む勇次郎。
ふふっ、愛蔵がバカで良かったぁ……!
あなた
私が保健室に行きたくない理由は、
LIP×LIP&ひより
うん……
あぁ……
あなた
私の家が、保健室の匂いに似てたからなんだよねー
あはは、と笑うと、ひよりとLIP×LIP3人は「は……??」と言う顔をする。
柴崎愛蔵
え、つまり、保健室とお前の家の匂いが似てたから行きたくなかったってことだよな?
染谷勇次郎
てことは、霜花は自分の家が嫌いなの?
あなた
好きじゃない、って感じ
涼海ひより
それは、なんで……?
おそるおそる、というように聞いてくるひよりを安心させるため、私は微笑みながら口を開いた。
あなた
いっつも母親のヒステリックな声が聞こえてたから
まぁ、そこまで大したことないけどね?
と付け足しておく。
柴崎愛蔵
まぁ、気持ちは分かる
染谷勇次郎
僕も。家に帰りづらいっていうか……
柴崎愛蔵
耳を塞ぎたくなるような感覚とか
染谷勇次郎
何もかも見たくなくて胸が苦しくなる瞬間とか
あなた
いや、そこまで重くはないけど
ここは言い切っておく。
本心なのは違いない。
あなた
さっきも言ったけど、好きじゃないってだけで嫌いな訳では無い。
むしろ、今は好きだよ。
柴崎愛蔵
え?
あなた
帰ってきたら、光希君と、建さんと、愛蔵が居て。
友達を家に呼べて。
そういう当たり前なことって、地味に難しいからさ
そういい少し笑ってみせると、ひよりが抱きついてきた。
涼海ひより
うちは嬉しい……!!
霜花ちゃんがこんなに立派に育ってくれて……!!
染谷勇次郎
何目線なの
柴崎愛蔵
おかんだろ……
涼海ひより
同級生に失礼やない!?
ムッと言い返すひよりに、愛蔵は少し笑って目を細めた。
柴崎愛蔵
俺は嬉しいよ。
こういう、母親っぽいの、あんま感じずに成長してきたからさ
するとひよりはキョトンとして。
かと思うと顔を真っ赤にして。
涼海ひより
それはズルいんやないの……!?
と睨みつけた。
あなた
はい、私の話はしたよ。
次に、君達の話ね。
そう言うと、愛蔵は少し眉間に皺を寄せ、田村社長に言うよう促した。
田村社長
あら、青春モードは終わったの?
柴崎愛蔵
青春ってモード形なんだな……
あなた
はい、終わりました!
染谷勇次郎
その言い方もなんかやだな……
2人ともうるさいなぁ!
ケチつけないでよね!
私は2人を軽く睨みつける。
と、田村社長が口を開いた。
田村社長
そうね、LIP×LIPがなぜLIP×LIPになったのかよね……
田村社長
最初はね、私もいくつか案を出てたのよ
あなた
どんなのですか!?
瞬間、LIP×LIPの2人は一気に顔を顰めた。
田村社長
2つあるんだけど、1つ目は、「ベストフレンズ」
ん?
この何が変なんだ?
頭の上にクエスチョンマークを浮かべ首を傾げる私に、勇次郎と愛蔵は神妙な面持ちで口を開いた。
柴崎愛蔵
ここまでは……っ。ここまでは良かったんだ……っ。
染谷勇次郎
そうなんだよ……っ。
ここからが問題なんだ……っ。
へぇ?
そんなになんだ?
私は田村社長に続きを促す。
田村社長は至って真面目な顔でこう告げた。
田村社長
2つ目ね、「愛♡勇」
ぶっ
田村社長が紙にハートマークのついた2人のユニット名を書く。
あなた
あい、らぶ、ゆう……っ
なんかもうホントにカップリング名みたい……っ
それに、よくこんな都合のいい文字が2人に合ったね……っ
田村社長のセンスすごいけどダサい……っ
色々な感情が一気に込み上げてきて、私は机に突っ伏しながら肩をふるわせた。
隣からは堪えるようなひよりの声が聞こえる。
柴崎愛蔵
だから教えたくなかったんだよ!
染谷勇次郎
ほんと、酷い話だよね
2人はぶすっと顔を膨らませそっぽを向く。
あなた
確かに、これは2人が名前を変える
だけある……っ
未だに笑っている私に、窒息するんじゃないかってくらいのひより。
2人は真剣な表情で告げた。
染谷勇次郎
僕達もさすがに危機感感じてさ、この社長に本当についていくのか、一瞬考えたよね
柴崎愛蔵
でもその後2人で、キスするみたいに愛を届けたいをコンセプトにしたLIP×LIPっていうユニット名が出来たんだから結果オーライな感じもするけど……
染谷勇次郎
社長は少し1晩考えた僕の気持ちを汲み取って欲しいです!
田村社長
1晩も考えたの!?
内田マネージャー
LIP×LIP許可して良かったですね……
ホッと息をついている内田さんに、社長はきらりと目を光らせながら尋ねる。
田村社長
まさかあなたもダサいだなんて……
瞬間光の速度で目を背けた内田さん。
2人に漂うなんとも言えない空気感に、愛蔵は口を開いた。
柴崎愛蔵
そ、そういえばなんで社長は俺らを呼んだんですか?
ナイス愛蔵!
私達の視線を受け継ぎ愛蔵は渾身のキョトン顔をする。
田村社長
あー、それは
内田さんに持ってくるよう促したのは、何かのチケットらしきもの……。
田村社長
今度FT4のライブがあるのは知ってるわね?
柴崎愛蔵
はい
染谷勇次郎
ありますね
相槌をうつ2人。
田村社長
だからこれ。
せっかくだからひよりと霜花も、LIP×LIPと一緒に見学してらっしゃい。
LIP×LIP
えっ
あなた
えっ
柴崎愛蔵
なんで…?
田村社長
勢いがあるアーティストのライブを見るのは、勉強になるわ
田村社長
実力派と言われる彼らのパフォーマンス、しっかり見てきなさい
その言葉に、2人の表情が変わった。

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