渡瀬歩𝓈𝒾𝒹𝑒.°
俺の名前は渡瀬歩……。
1年3組39番。
明日はいよいよ体育祭本番だ。
?「No.One!」
渡瀬「どうした、No.eight」
彼はNo.eight。
名前は知らない。
確か1年2組……サッカー部だっただろうか。
No.eight「体育祭を目前として、我ら岩泉ファンクラブへの入会希望者が多数押し寄せております!!」
そうか……。
ファンクラブへの入会は、基本的に俺ともう1人、No.twoとの面接で決まる。
とは言っても彼女……岩泉あなた様への忠誠心があれば誰でも入会可能だ……。
しかし……。
渡瀬「あまり一度に大勢も入れていられないな。書類審査にしようか」
ここ、旧校舎三階の空教室は、岩泉あなた様のファンクラブのためだけに使用を許可された場所。
……勿論そんなこともなく、鍵を壊して入っているので先生にばれたら説教どころの騒ぎではないだろう。
俺は机の中から1枚の紙を出し、No.eightに手渡した。
渡瀬「これをコピーして名前を書かせるんだ。提出したものからNo.89から順に会員番号を渡そう」
今朝入会を希望してきた3年生の女子2人組で、88人だった。
もうそろそろ100に届くな……。
ファンクラブの男女比は今のところ6:4くらいか……。
チラッと、手元の余りの用紙に目を落とした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!