あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
あなた「は________ずかしかっ、たぁぁ……!」
月島「……の割にはノリノリに見えたけど?」
2年生のペアがステージに上がっている間、裏の控え室で項垂れた。
あんなに人いるとか聞いてないし……頭真っ白になって何言ったかほとんど覚えてない……。
決められてた台詞ちゃんと言えてたかな……?
小鳥遊「うわあああああんすごかったよっ!!」
あなた「え、なんで涙目なの……!?」
室内に飛び込んできた小鳥遊さんが物凄い顔をくしゃくしゃにしているものだから心配になった。
小鳥遊「うぅ、もう私に悔いはない……推しカプにあんな大好物演じてもらえるなんて……っ、」
おしかぷ……?
だいこうぶつって、大好物……?
あなた「え、と、んん?」
月島「……気にしなくていいと思う。というかこれ、脱ぎたいんだけど」
小鳥遊「ダメだよ!!!」
いきなり大声で怒り始めた小鳥遊さんは、ウィッグを取ろうとした月島くんの手首をがっしりとホールドした。
月島「え、もう終わったでしょ。なんで……」
顔を引きつらせて振り払った月島くんに、鼻息を荒くする。
小鳥遊「「なんで」って、ここのペアが優勝するに決まってるからだよ!!優勝ペアは最後またステージ上がらないとなんだからね!?」
あなた「え、いや、優勝するって何を根拠に_____」
綾乃「よく言うわ、会場血の海にした張本人が」
あなた「、綾乃!?」
腕を組んで苦笑している綾乃と、さくらたちが入ってきた。
そっか、屋台のシフト終わったんだ。
あなた「って、血の海って何……会場の熱気にやられたんでしょ?皆」
真綾「そういう事にしとこう!それよりあなたにドS本性があったとはねぇ……あらイケメン、」
真綾が顔を覗き込んでニヤりと笑い、物色するように全身を見回した。
この格好落ち着かないんだよな……鏡見ても自分じゃないみたいだし。
さくら「月島くんの女装も凄く似合ってる!」
月島「……ドーモ」
眉間にシワを寄せて顔を背ける。
真綾「月島くん、ほんとに女の子と話すの嫌いだよね〜」
さくら「しょうがないよ、愛しの彼女しか見えてござらんのよ彼には……」
あなた「え、今のは純粋に女装褒められたのが嫌だったんじゃ_____、」
グイッ、
あなた「わっ、」
肩に真綾の腕が回ってきて、体重が乗っかる。
真綾「……で、ぶっちゃけどこまで進んでるの?2人って」
あなた「っ、はぁ!?」
さくら「私も気になってた!」
綾乃「さっきのステージもただならぬ雰囲気あったしね〜」
3人揃って虐めてきやがって……。
あなた「こっ、高校生らしい健全なおつき合いをさせて頂いておりますが……」
真綾「いや明らかにそんな2人にはできない演技だったけどね?ねぇ〜月島くんっ!」
月島くんに聞こえないように潜めていた声をクレシェンドのように大きくする真綾。
あなた「ちがっ、あれは知り合いの人のが移っただけで、」
さくら「知り合い、?」
あなた「前他校の文化祭行った時に、丁度ステージでSっ気がうけてたから……真似してみただけだよ」
月島「…………音駒のこと?」
あなた「え、あ……そう」
頷くと、「へぇ」と興味なさげにペットボトルのお茶を飲み始めた。
小鳥遊「聞き捨てなりませんねぇ……!素であのキャラがいらっしゃると?三次元に??是非連絡先を頂戴いたしたいのですが!!!!」
あなた「ええぇ……?」
小鳥遊さんのツボってどこなんだろう。
あなた「や、勝手に渡したりするの黒尾さんは嫌いだと思うから……、」
月島「……」
というか皆嫌いか、そんなのは。
さくら「え、あなた……さん?」
あなた「_____へ?」
顔を青ざめさせたさくらに首を傾げていると、ぬっと影が私に被さった。
振り向いた瞬間、大きな手が私の顔を覆う。
あなた「ふみゅっ、ふ、ふひひはふ、」
親指と、中指人差し指に挟まれて頬をむにゅむにゅされて、思うように声が出せない。
月島くん……?
急に何_____。
月島「へぇ、黒尾さんのドSっぷり見ていいと思ったんだ?」
あなた「……ふぇ、?」
月島「で、かっこいいなぁって思って真似してみたんだ?」
あなた「ん、ぅ……?」
月島「他の男の真似を僕に対してするって事が何を意味するのか、この小さい頭でもよく考えたら分かるよね?」
あなた「______……、」
月島「あれ、どうしたの目ぇ逸らして……何々、何か分かった?言ってごらん自分の口でさぁ。ほらほら」
あなた「ほ、ほへんはは、」
月島「何、日本語もちゃんと喋れないの?口の動かし方から教えてあげようか」
あなた「ふ、ぁ……っ、」
月島くんの長い指が、下唇をつぅ と這う。
やらかした……と思ったら、もう遅い。
月島くんに黒尾さんは禁句と言っても等しいのに……。
月島「「ごめんなさい蛍くん、もうしませんから許してください」って……ほら、言ってごらん?」
あなた「んにゅ、ぅ……ほ、ほふひはへ、」
月島「ほらちゃんと喋らなよ。やり直し」
あなた「ううぅ、……/」
綾乃「(あなた……好き勝手され過ぎじゃ、)」
真綾「(どんな顔して見てればいいの……///出て行くタイミング見失ったわ!)」
さくら「(ステージと立場逆じゃん……これぞ天然ドS月島くんっ、)」
小鳥遊「(圧倒的あなた蛍だと思いきや無難な蛍あなたでもよかったかぁぁぁ今からでもコンセプト変えれるかな!?あひゅっ、それなら衣装ももっとこう_____うへ、創作意欲が止まらんですなぁ///おっと鼻血が☆)」
ほんとに……文化祭悲惨すぎる。
・
・
司会〈結果発表!!!!男装女装コンテスト、映えある優勝に輝いたのは勿論この2人ぃぃ!!〉
控え室で待っていると実行委員の人が呼びにきて、小鳥遊さんの言っていた通り優勝したようだった。
合図に合わせてステージに上がると、またもや凄い人気に驚いた。
司会〈お二人には記念品とチェキが贈られます!おめでとう〜!!〉
?「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!」
あなた「!?」
さっさと受け取ってここから離れようと思っていたのに、観客の方から大きな聞き覚えのある声。
「え、嘘、あれって青城の_____」
「え、来てるってマジだったの!?待って鏡、!」
と、徹くん……。
及川「ウチのあなたはねぇっ、カッコいいだけじゃなくてちゃんとその1000倍可愛いんだから!!理解してんの!?」
花巻「そーだそーだー」
あなた「え、ちょ、何言って_____」
岩泉「あとこの場で言わせてもらうが妹に近付きたかったら俺を通せってか不用意に話しかけんなぁぁぁ!!」
花巻「そーだーそーだー」
あなた「お兄ちゃん!!?」
松川「ほらちょっと、あなたが可哀想だから_____」
及川「そもそもまっつんが目を離すからこうやって変なのいっぱいついてきたんだからね!!」
牛島「?変なのとは何の事だ。それより前が見えないから座ってくれないか」
岩泉「てんめぇはいつまでいやがる気ださっさと失せろ……!?」
天童「あれあれ〜?あなたたんのおにーちゃん実は相当なシスコンだったり_____」
岩泉「誰がっ」
牛島「天童。岩泉に「シスコン」は厳禁だ。本人が「シスコン」である事を気にしているのだからわざわざ「シスコン」と文字に起こさなくても「シスコン」の意味は伝わる」
岩泉「マジで顔面圧し折ったろか……!!?」
澤村「ちょ、周りの迷惑になってますから……!」
日向「あの、菅原先輩。「シスコン」ってなんですか?」
菅原「ああ、正式には"シスターコンプレックス"っていうんだけど、女姉妹に対して強い愛着・執着を持っている状態の事で_______」
花巻「は〜い岩泉はシスコンで〜す」
松川「異議な〜し」
及川「賛成〜!ちょっと見てるだけですぐ怒るもん!!」
岩泉「おいクソ川……てめぇいい加減風呂上がりのあなた見て元気になんのどうにかしろや」
及川「〜っ、!!?///ちょ、岩ちゃんそれここで言う!!?」
花巻「マジで……?だいぶ引くわ」
松川「節操なし……」
及川「はぁ!?お泊まりした時結託してあなた襲おうとしてた2人がよく言うよ本当に!!!」
日向「菅原先輩、「元気になる」って悪い事なんですか……?健康なら良いんじゃ_____、」
菅原「日向……頼むからやめてくれ、//」
…………。
あなた「あの、記念品ください」
司会〈(お風呂上がり……//)えっあ、は、はい!それでは2人に大きな拍手を……!〉
大騒ぎする大馬鹿共に視線が集中している隙にいそいそとステージから降りた。
・
・
月島「まさか白鳥沢まで居るとは_____って、」
あなた「……そうだねぇ」
月島「……(まずい、滅茶苦茶怒ってるなこれ)」
続いての未成年の主張を観るために、私たちは制服に着替えて屋上したまで移動した。
・
「2年2組〜坂本佳史です!!今日はある人に〜伝えたい事がある!!」
「「「だぁぁ〜れぇぇ〜?」」」
「2年3組〜!杉林道子さん!!!」
「「「きゃぁぁぁぁっ!///」」」
あー……青春だ。
よくよく考えたら私の青春どこいった?
文化祭最初から最後まであいつらのせいで散々な目に遭ってるんですけど……!!?
はぁ……。
月島「あ、次王様みたいだよ」
あなた「……ほんとだ」
月島くんが教えてくれて、見上げると柵に片手をかけて下を見回している。
何か探してるのかな……?
影山「…………あ、何から言うんスか」
どわっと笑いが起こり、赤面するカゲくん。
いやもう、ここにきて唯一の癒しなんですけど……カゲくんを癒しとする私重症じゃない……?
影山「1年3組、影山飛雄です!!宣言します!!」
「「「「なぁぁぁにぃぃぃぃ???」」」」
宣言かぁ……日本一のセッターになるとか言うのかな?
影山「_______世界一のプレーヤーになって!!!」
あなた「_____、世界……!?」
影山「_________、」
カゲくんは、すぅっと息を吸うと斜め下_____私と月島くんが立っている方に顔を向けて声を張った。
影山「いつか絶対!あなたに"1番好きなバレー"って言わせる!!」
あなた「……〜っ、!!?」
突然出てきた私の名前に、思わず息を呑んだ。
今、とてつもない事言われた気が_______。
影山「見とけよ!!!!」
カゲくんが私を見て言うものだから、視線が集まった。
「え、あなたって岩泉さんの事だよね……!?」
「やっぱり影山くんと付き合ってたんだ!?」
「やめてよ菅原先輩説推してるのに!」
「及川さんでしょ何言ってるの!?」
……カゲくん。
あなた「__________月島くん」
月島「……?」
あなた「ちょっと、行ってくる!」
月島「え、」
カゲくんの真っ直ぐな言葉に、一瞬今日のモヤモヤが全部綺麗に消え去った。
私も__________言いたい事、ある!!
屋上まで続く階段を駆け上がって、駆け込み主張の受け付けに飛び込んだ。
あなた「あのっ、主張したいんですけど……!!」
✂︎_________________________
あなたちゃん、貴女以上に青春してる人いません←
ネタ要素詰め込み過ぎたら5000字超えた、すぐ調子乗りますはい←
文化祭くらいおちゃらけてもいいよね、((ユルシテクダサイ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!