一時間目が終わって、私はウロと廊下を歩いていた。次の授業は移動教室だからだ。
外から暖かい日差しが降り注ぐ。
他愛もない話をして過ごす、なんでもないような日常が私は好きだ。
と、その時後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。
可愛らしいアルトの声に振り返ると、少し背の低い彼がこちらへ走ってくるのが視界に入った。
彼はそのままの勢いで飛びついてきた。
少しよろめきつつ受け止める。
にこっと効果音が付きそうな、彼、天乃シンくんの笑顔は、そこらの女子の何倍も愛らしい。
彼と世間話でもしようと口を開いた瞬間に、遮るようにウロがシンくんの肩を叩いた。
彼は少しむっとした顔でウロの方を振り返る。
ウロが一言何か言って、シンくんを連れてここから離れたところへ歩き出した。
どうしたの?と聞いたが、ちょっと待ってろと言われてすぐに行ってしまったので、大人しく待っていることにした。
学校の喧騒に紛れてよく聞こえないが、かすかに二人の会話が耳に届く。
ウロの言葉を聞いたシンくんは、その端正な顔を歪めてウロを見た。
口の動きから見て、は?とでも言ったのだろうか。
普段はふわふわしているシンくんがそんなことを言うなんて、一体何があったのかな…
ぼんやりと彼らを眺めて、そして、ふと先程まで聞こえていた騒がしい声が聞こえなくなったことに気がついた。
それから近くの時計を見た。
…そして、私はウロの手をガッと掴んだ。
シンくんには悪いが、慌てて走り出す。
二度目だけれど次の授業は移動教室で、さらに怒ると怖いことで有名な山田先生だ。
ウロと一緒に階段を駆け下りる。
しかし私達のそんな努力も虚しく、授業開始を告げる鐘が響いた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。