私は盛大にため息を吐く。
疲れた理由は明白すぎる。
今日だけで軽く1年分ぐらいの出来事が起きた感が否めない。
本当は今すぐにでも別途に大分したいところだが今日はそれは叶わない。
なぜなら今日は夕凪(神楽くん)の定期配信の日だからだ。
流石にこの前みたいにすっぽかす訳には行かない。
気分転換がてらに配信を見ようと決心した私は自分のパソコンを起動した。
いつしか注文した私でも手が届くようなお安めのキーボード。
キーボードを買うとお母さんに言った時は少し引かれてしまったが、デザインとタイピング音に惚れてしまったから仕方ない。
私はハサミで丁寧にダンボールを開けると、買う前に動画でみた開封動画と同じ箱が出てきて思わずテンションが上がった。
ピンクを基調とした丸っこいキーボードは私の好みにどストライクにあっている。
少しキーボード部分を触ってみると、ポコポコと可愛らしい音が鳴った。
キーボードに接続しようと思ってパソコンで時刻を確認すると、もういつもの時間が迫っている。
私はキーボードの接続は一旦、後にしてとりあえず夕凪の配信をリアルタイムで聞くことを優先した。
聞こえるのはいつもの声。
いつもの声なはずなのに……神楽くんと姿が重なってしまう。
同一人物って言ったらそうなってしまうが、友達である私と一人のファンでいる私をどうしても自分の中で区別したかった。
一瞬、ほんの一瞬だけ、夕凪のいつもの固定キャラが神楽くんに見えて慌てて瞬きをする。
そして視界に現れたのは夕凪の固定キャラ。
あの帰り道から私はどこか変だ。
"推してる"ときとはまた違う、なんとも言えない胸の高鳴りと痛み。
―――から?
嫌だ、嫌だイヤだ、いやだ。
まだ、認めたくない。わかりたくない。
この気持ちを……私は、知りたくない。
夕凪の配信の声はいつの間にか聞こえなくなっていた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。