ぐうーと大きくお腹の虫が鳴る。
あ、と声をもらすと風楽さんに音が
聞こえていたのかくすりと笑みをこぼしていて
カアっと耳が熱くなる。
ジャジャーンと謎の効果音で見せられたのは
とろとろのオムライス。
ほかほかと温かい湯気がたっていて、
それはそれはとても美味しそうでまたお腹が鳴る。
「もちろん!」と言ってくれる風楽さんに
ホッと少し心が落ち着いてそこら辺にあった
机にオムライスを置いてもらい、椅子に座る。
温かい匂いが鼻をかすめて、食欲がそそられる。
早く食べたいって気持ちが跳ねる。
……おいしい。その気持ちだけが
心の中に浮かんで語彙力がなくなる。
パクパクと食べる手を止めずに進めていると、
風楽さんが目の前の席に座る。
風楽さんの問題発言に食べ物が変なところに
入って詰まってむせる。
涙目なみだめになって水を探すとそうした犯人が
ヤケに心配そうに水を渡してくる。
無意識…!?一番たちが悪い…
やっぱり慣れてるし、からかわれてるんだ…。
わかってたはずなのになぜかがっかりしたような
声を出す心に疑問を抱きつつも「先輩」と呼ぶ
声に顔をあげて考えを振り払う。
言葉を遮って、否定する。
私が発言する度に眉を下げる風楽さん。
ああ、ほらやっぱり迷惑かけてばっかりだ。
こんなの先輩って言えないんじゃ、
部屋に響いた風楽さんの声にびくりと
肩を跳ね上げる。
目を合わせたくなくて、逸らしたくなって
そっぽを向くとガタリと椅子が動く音がした。
両頬を掴まれて顔が上げられて、
宝石のような瞳と目が合う。
瞳を逸らせない。
今この瞬間、風楽さんと世界で
ふたりきりになってしまったみたいで、
また心臓が変な音を立てる。
「風楽さん」って口から落ちた小さな声は
きっと聞こえていないはずなのに、
からかいのはずなのに優しく切なげに微笑む
風楽さんに心臓がうるさくて、ぶつけたところが
痛いなんて気持ちはとうにどこかに消えていて…
あ、まただって思って、
周りに電話の音が響き渡った。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!