あの凄惨な「処刑ライブ」から、ひと月が過ぎた。
王国のスタジアムを包んでいた漆黒の結界は消え去り、
今では初夏の日差しが心地よく街を照らしている。
いれいすハウスの居間には、再び「いつもの」喧騒が戻っていた。
いつものように追いかけっこを始める二人。その様子を、
ソファに深く腰掛けたIfが、呆れたように、けれどどこか愛おしそうに眺めている。
二人が笑い合っていると、キッチンからないことりうらが、お茶菓子を持って現れた。
ないこの言葉に、リビングの空気がピリリと引き締まる。5人は自然と姿勢を正し、リーダーの顔を見つめた。
りうら、ほとけ、初兎が、わずかに俯く。洗脳が解けたとはいえ、
仲間を殺そうとしたという「事実に近い夢」は、今も彼らの夜を時折、暗闇に染める。
ないこは、包帯が巻かれた自分の首筋を指先でなぞった。
それは、りうらの炎を正面から受け止めた時に刻まれた、消えない「勲章」だ。
3人の瞳には、もはや洗脳の影などなかった。
そこにあるのは、後悔を超えた先にある、深い信頼の光だ。
一週間後。
スタジアムは、かつてないほどの熱気に包まれていた。
客席には、いれいすの無事を祈り続けていたファンたちが、色とりどりのペンライトを掲げて待っている。
ステージ裏で、6人は円陣を組んだ。
出囃子が鳴り響き、6人が一斉にステージへ飛び出す。
スポットライトが彼らを照らした瞬間、武道館が揺れるほどの歓声が上がった。
一曲目は、あの絶望の中でないこが歌い始めた曲。
かつては血を吐くような絶唱だったそのメロディは、
今、極上のハーモニーとなって、夏の夜空へと溶けていく。
6人の歌声が重なり、虹色の光となって空を突き抜ける。
その光は、王国の隅々まで届き、人々の心に希望を灯していった。
歌い終わり、肩を組んで客席にお辞儀をする6人。
その頬を、心地よい風が吹き抜けていく。
洗脳も、絶望も、不協和音も、
すべては彼らの物語を豊かにするためのエッセンスに過ぎなかった。
彼らの前には、どこまでも続く真っ白な未来が広がっている。
東京ドームという夢のその先へ。
6人のイレギュラーな協奏曲は、決して、終わることはない。
〜The・End〜












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。