第5話

#3
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2022/01/29 22:29 更新



「…ん…?」


ぼーっと、河原に立っていた。
そのとき、下の河川敷に、見覚えのある人影を見た。


「…っ、あ」


向こうも俺に気付き、驚き目を丸めている。
俺は、小さくお辞儀をした。
何年振りだろう。本当に久しぶりに見た。
優しそうな瞳は昔から変わらない。
あなたの、母親だった。

河川敷まで降り、あなたの母親に近づく。



「おばさん、お久しぶりです」

「本当に…久しぶりね。少し見ない間に随分と立派になられて」

「いいえ…。お元気でしたか?」

「ええ。私は…元気でした。和也くんは?」

「俺も、相変わらずです」



あなたは、何をしているんだろうか。
聞いてもいいのだろうか。
少し悩んでいると、彼女は口を開いた。



「…和也くん、あなたとは、連絡取ってるの?」

「…いえ。一方的に別れを切り出されて、一度そちらに連絡しましたけど…あれから、何も変わってないです」

「…そう。和也くんは…、あなたに、会いたいと、思う?」



質問の意図がわからなかった。
そんなもの、愚問である。



「当然…。俺はまだ、納得してませんから」



俺がそう答えると、彼女は柔らかい笑顔で俺を見た。
だけど、その笑顔はどこか哀しそうで。



「和也くんの連絡先、聞いてもいいかしら」

「え?あ、はい」

「和也くん」



俺の名刺を受け取った彼女は、一息ついて。
俺の目をみて、口を開いた。



「…あなたが、今、どんな状況だとしても。会いたいと思いますか?」

「…どんなって…」

「…あなたが今でもあの子を想っていてくれるなら、伝えるべきだと…思うので、言いますね」



改まる口調。走る緊張。



「あなたは…あの子は、癌です。長くてあと1年。あと1年で、あの子は死にます。」

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