「…ん…?」
ぼーっと、河原に立っていた。
そのとき、下の河川敷に、見覚えのある人影を見た。
「…っ、あ」
向こうも俺に気付き、驚き目を丸めている。
俺は、小さくお辞儀をした。
何年振りだろう。本当に久しぶりに見た。
優しそうな瞳は昔から変わらない。
あなたの、母親だった。
河川敷まで降り、あなたの母親に近づく。
「おばさん、お久しぶりです」
「本当に…久しぶりね。少し見ない間に随分と立派になられて」
「いいえ…。お元気でしたか?」
「ええ。私は…元気でした。和也くんは?」
「俺も、相変わらずです」
あなたは、何をしているんだろうか。
聞いてもいいのだろうか。
少し悩んでいると、彼女は口を開いた。
「…和也くん、あなたとは、連絡取ってるの?」
「…いえ。一方的に別れを切り出されて、一度そちらに連絡しましたけど…あれから、何も変わってないです」
「…そう。和也くんは…、あなたに、会いたいと、思う?」
質問の意図がわからなかった。
そんなもの、愚問である。
「当然…。俺はまだ、納得してませんから」
俺がそう答えると、彼女は柔らかい笑顔で俺を見た。
だけど、その笑顔はどこか哀しそうで。
「和也くんの連絡先、聞いてもいいかしら」
「え?あ、はい」
「和也くん」
俺の名刺を受け取った彼女は、一息ついて。
俺の目をみて、口を開いた。
「…あなたが、今、どんな状況だとしても。会いたいと思いますか?」
「…どんなって…」
「…あなたが今でもあの子を想っていてくれるなら、伝えるべきだと…思うので、言いますね」
改まる口調。走る緊張。
「あなたは…あの子は、癌です。長くてあと1年。あと1年で、あの子は死にます。」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!