サンヒョン side
高校に入学した日
僕は入学式の会場で、一人の先輩に目を奪われた
ただそれだけだった
話したこともないし
名前も知らない
でもその先輩が友達と笑っている姿が妙に綺麗で、気づけば目で追っていた
胸が少し苦しくなった
その先輩が2年上の先輩で名前が"あなた"だと知ったのは数日後だった
廊下ですれ違った時、胸元の学年カラーを見て気づいた
(あ、あなた先輩3年生なんだ)
そう思った瞬間、すごく遠い存在になった気がした
2年生ならまだしも3年生、それは入学したばっかりの僕にとってものすごいハードルに思えた
それでもあなた先輩を見かけるたび嬉しくなった
昼休みに廊下を歩いているだけで探してしまう
体育館で見つければ目で追う
たまに目が合うだけで空でも飛べるような気がした
これは完全に恋だった
でも僕に話しかける勇気なんてない
だってあなた先輩は人気者だから
いつも周りに友達がいて、笑顔が可愛くて
話したことのない僕なんか当たり前だけど、覚えられてもいないだろうと思っていた
そんなある日
放課後の図書室で偶然あなた先輩と二人きりになった
司書も今はいない
僕が本を探していたら高い棚の本に手が届かなくて困っているあなた先輩の姿が見えた
そして気づいたら身体が動いていて
『取りますよ』
と声をかけていた
先輩が驚いた顔で振り向く
「あ、ありがとうㅎ」
近くで聞いたあなた先輩の声は思ったより柔らかかった
そのたった数秒で僕の心臓が壊れそうになった
それからあなた先輩とは少しずつ話すようになった
図書室で会えば挨拶する
廊下ですれ違えば手を振ってくれる
それだけで今までにないくらい十分幸せだった
でも人間は欲張りだ
話せるようになるともっと話したくなる
もっと近づきたくなる
もっと特別になりたくなる











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。