Sugary × Indulge...7
グリさんの所で働かせてほしいと不躾にもお願いするも、フレア団とかかわりのないわたしを働かせるわけにはいかないと、それは受け入れてもらえなかった。
認めてもらうまで頑張る…とその場を立ち去った道すがら出会ったカラスバさん。
たまたま通りがかりに一件の会話を聞いており事情は理解したと、良い考えがあると提案を持ち出され連れて来られた怪しげな場所……!
ゴツゴツとした石調の外壁。黒やグレーを基調にしており重厚な存在感を放つ建物だ。
和風な庭門にそれと連なる門塀がぐるっとこの建物を囲み、所々に竹が生い茂り屋上部分には竹林をなしているように見えた。
庭門の前に立つ二人の門番らしき強面な人らを通過すると、きれいに手入れされた枯山水と、神社の狛犬を連想させるマタドガスとドドゲザンの石造。
その先の大きなガラスの扉が開かれると通路の両側には人々が並んでいた。まるで重役を護衛するボディガードの如く、背筋をピンと伸ばし儀仗隊のように整列していた。
(…カラスバさんって一体何者なの?!)
「「「 お疲れ様です!!! 」」」
(ヒィ…!!)
カラスバさんの帰着に通路に並んでいた人たちが一斉に労いの言葉をかける。突然のことでビクっとしてしまうわたしを他所に、カラスバさんは当たり前のように対応していた。
儀仗隊(仮)の皆さんを通過した先には大理石のような見た目をしたこれまた堅牢な扉があり、こっちやでと声を掛けてくれる。わたしは黙ってカラスバさんの後に続く。
「ボス、おかえりなさいませ」
「おう、ジプソ悪いけどこちらのお嬢さんにお茶でも出したって」
「かしこまりました」
ジプソと呼ばれた大柄の男性は目が合うと軽く会釈をしてからお茶の用意のためそのまま奥へ姿を消した。
「ふぅ〜、改めてご足労いただき感謝やで」
「も少したらジプソ…あーさっきのデッカい男な、も来るさかい、ちょお待っといてな」
提案ってなんなんですか、と口走る寸前止められてしまった。仕方なくふかふかのソファに背中ごと預けると身体の重みで沈んだ際ワンピースの裾が持ち上げられ、もともと短めの丈がさらに短く危うい状態になったためストールを膝掛けのようにして目隠ししたら、なんや寒かった?とカラスバさんに気遣われてしまった。
「お待たせいたしました」
粗茶ですがどうぞと湯気の立つお茶をわたし、カラスバさんの順に提供してくれるジプソさん。
「ほんなら本題に入ろか」
「ボス…失礼ですが、こちらの女性は」
「せやな、まずは改めて自己紹介からやな」
カラスバさんはここまでの経緯をジプソさんへ説明してくれた。そして自身の自己紹介、ジプソさんの紹介と続け、この《サビ組》という場所やその成り立ちなどを教えてくれた。
「とまぁ、簡単に言ったらサビ組はミアレの何でも屋。困ったミアレ市民に救いの手を差し伸べんのがオレ達の仕事っちゅうわけやな」
「せや!キミ、手に職付けたい〜って思ってるんやろ」
「そのヌーヴォカフェで働かせてやる言うたら?」
「えっ…!?」
わたしとまるで同じ反応をしたジプソさん。
リアクションとセリフがシンクロしていた。
「ボス……いくらなんでもそれは…」
「普通に考えたらそうなるな」
「ええか、物事は多角的に考えなアカンのやで」
このミアレにはZAロワイヤルがあるのは知ってるやろ?と足を組み直しながらわたしに尋ねるカラスバさん。
はい、と頷き相槌を打つとジプソさんともアイコンタクトをしそのまま説明を続ける。
「事前に調べさせてもらったんやけど、あなた、キミはここ最近ミアレにやってきたらしいな」
「ZAロワイヤルが何たるかは理解しつつも、まだロワイヤルには未参加やんな?」
そう。メガストーンを入手すべく、目指すはランクA!とあんなに意気込んでいたのに体調不良でそれどころではない日々を送っていたのだった。
「キミもよく知っとるセイカにガイは、ZAロワイヤルのAランカーとなり今のZAロワイヤル∞を実現させた」
「ボス、お言葉ですが、本件に関してそれが一体なんの関わりが…」
「まあ、話は最後まで聞きぃ」
「失礼いたしました」
「ミアレに住むバトル好きな奴らはみーんな、Aランク目指して日々切磋琢磨してんねん。ほんで現状のBランカー、それがグリや」
「Bランクのグリを倒し、あなたがAランクへランクアップすることができれば…グリも言うこと聞くはずやろ」
「なるほど…。」
「弱肉強食、実力主義…競争原理が強く働くこの環境で、格下ランカーは否が応でも上位ランカーの言うことを聞くんが至極当然やと思わん?」
そう言って悪い笑みを浮かべるカラスバさん。
言っていることは確かにと頷けるんだけど、わたしにその実力が…という迷いが心の中にわだかまっている。
「なら決まりやんな」
「お困り事があればいつでも仰ってくださいね」
「ほんでもし、それでも慈善活動云々で報酬はあげられないとか言われたらオレが支援したるわ」
「派遣社員みたいな?そん時はあなたをサビ組の社員として扱ってやったるから、路頭に迷わんでもよくなるで」
「なんでやねん、めっちゃええ話やんか」
♦︎♦︎♦︎
「よくないよ!!サビ組にお金でお世話になるとか、絶ッッッ対ダメ!!」
「破滅の末路を辿ることになりますよ!!」
「ははっ なんか懐かしいな!」
「「 ガイは黙ってて(ください)!! 」」
「ガイ…ほんと反省してる?」
ホテルに戻り、今日の出来事の報告。
デウロちゃんとピュールくんが必死の形相で阻止する一方でガイくんは他人事のように笑っている。
セイカちゃんはこめかみに手を当て、やれやれといった表情で。
「ZAロワイヤルの参加自体はいいと思うけど…」
「サビ組経由の金銭授与…ガイの二の舞…」
「…マネーロンダリングの可能性もありますよ」
デウロちゃん、セイカちゃん、ピュールくんが思い思いに発言する。色んな意見が錯綜していて、ひとまずサビ組と金絡みは御法度ということだけは十分に理解できた……。
♦︎♦︎♦︎
翌日、わたしはまたヌーヴォカフェに来ていた。
「…あなた」
「きみ…また来たのか!こりないやつだな!」
「グリーズ、カフェに来られたお客様に失礼ですよ」
「でも…!」
連日の来店で、グリーズさんはやや面倒くさそうにしていた。昨日のこともあり、またバイトさせて欲しいと懇願されると思ったのであろう反応だ。
「……では本日のご注文は」
「何しに来たんだよ」
「はぁ?」
「一体どういう意味ですか」
握りしめた拳は震え、真剣な眼差しでグリさんを見る。
グリさんの伏せられた瞳が開き、しっかりとわたしを捉える。
「…いいでしょう。受けて立ちます」
「正気かいグリ…」
「ええ。おれも伊達にZAロワイヤルで長いことBランカーをしていません、挑まれたバトルは真摯に受け止めます」
よし…ちゃんとグリさんに熱意を伝えられた。
まだまだ道のりは長いけれど、千里の道も一歩から、できるところからコツコツと、着実に弛まず歩み続けよう。
「なんだそりゃ」
「… フフッ、きみは面白いひとですね」
すぐに作りますね、とグリさんはカウンター越しで作業を始める。
グリさん、あんな風に笑うのか。いつもほとんど表情は変わらず、クールな印象だから初めての笑顔に魅入られた。
「お待たせいたしました」
「いつものカスタマイズにしてます」
どうぞ召し上がれ、そう言って両手で丁寧に手渡された紙コップ。受け取ると指先がじんわり温かく、チラリとグリさんの顔を盗み見ればにこりと笑顔のままで、また胸の奥で鼓動がそっと速まった気がした。
to be continued...!
♦︎おまけ♦︎
『ところでカラスバさん、ヌーヴォカフェ付近を通りがかったって言ってましたけど…何しに来てたんですか?』
「あ〜 なんやワイルドゾーンエリア20にごっつデカいペンドラーがおるって聞いてなぁ、見に来てたんよ」
『へ、へぇ〜…あ、じゃあわたしのことは事前に調べたって言ってたあれは一体…?』
「あ〜 それはあれやで、あんま見ぃひん顔のやつおんなー思て身辺調査やらなんらやさせてもろただけやで」
『えっ…!?』
「やって、ミアレに住むならミアレ市民税いただかな…ミアレで暮らすってそういうことやん?それが社会のルールやん?」
『そ、そーですねー……!!』
__その後、今は観光客としてホテルZに滞在し、新居が見つかり次第早急に転入届を提出する旨、超説明して納得してもらった。
♦︎おわり♦︎
カラスバさん二人称わからない〜(◞‸◟)
オマエ?キミ?初対面だったし柔らかめのキミにしてみました。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!