第13話

空席
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2025/09/20 04:36 更新
メトクマdis

次の日。昼休み、いつもの約束の場所にせいじくんは来なかった。
用が出来たのか聞くために、せいじくんのクラスへ向かう。
せいじくんの席が空いている。

綺麗にまとめられた教科書も、椅子にかけられた制服も、今日はなかった。机の表面にはうっすらと傷がついているのが廊下からでもわかった。
せいじくんは、今日休んだんだ。
ちょうど通り掛かった1年担当の先生に声をかけた。せいじくんの欠席の理由を聞いてみたが、体調不良じゃないか、の一点張りでそれ以上を教えてはくれなかった。
俺、何やってるんだろう
昨日あんなに言ったのに
ここにいる、なんてカッコつけたこと言ったのに
結局また、何も出来なかった
真白 夢人
真白 夢人
なんでかな…
思わず、そんな疑問が口から出ていた。
誰に向けられた訳でもない。
誰も返事をくれない。
でも、この沈黙に声を出さずにはいられなかった。
そのままベンチに座ってお弁当を食べる気にもなれず、俺は教室へと引き返した。
教室は想像以上に静かだった。
いや、騒がしかったのかもしれない。けれど、俺の周りには誰もいないように静かさでカーテンの揺れる音だけが虚しく耳に届いていた。
お弁当をあけ、唐揚げをつまんで口に入れる。
味なんてしない。
咀嚼する度に虚しくて寂しくなっていくようで、ただお腹を満たすためだけに口に運んでいた。
隣の席を見る。可愛い笑顔の彼は今日も休みだ。
せいじくんとお昼を食べるようになってから休んでいる。
1度体調不良かと思い、メールをしてみたものの長期撮影がある、と言っていた。俺には踏み込んでは行けない世界のような気がしてそれ以上会話は出来なかった。
テトさんはいない。せいじくんもいない。
気づけば俺は1人になっていた。
その時、視線を感じた。
顔を上げる。廊下を見る。目の奥にはひかりもなく、ただこちらを睨んでいる人影。
真白 夢人
真白 夢人
ななもんさん…?
彼の名前を呟く。
静かに立ち上がって廊下へ向かうと、ななもんさんは後ろを向いて黙って歩き出していた。
思わずかけ出す。
待って欲しい。声を聞いて欲しい。声を聞かせて欲しい。
真白 夢人
真白 夢人
ななもんさん…!
教室を飛び出し、背中に声をかける。 
笑喜 七都
笑喜 七都
俺は君が嫌い…
もう話しかけないで…!
こちらを振り向いた。悲しみと怒りの籠った静かな低音。
真っ黒な目の奥には何かが揺れていた。静かな拒絶。
足が止まった。息も止まった。
時が止まったようだった。その空間のなかでななもんさんただひとりが、向こう側へ歩き出していた。
ななもんさんの姿が見えなくなると、時は動き出す。
周りの生徒は俺を見て、ひそひそ話を始めた。 笑う生徒もいる。
可哀想だね、何かあったんだね、と同情してくれる生徒もいる。
そんなのが欲しかったんじゃなかった。
嫌われている。そんなの分かっている。
声をかけない方が、俺としてもななもんさんにしても正しくて、いい方法。
正しくない方法を選んでも、俺はななもんさんともう一度話がしたかった。笑い合いたかった。話を聞いて欲しいし、聞かせて欲しかった。
認めたくない感情を認めざるを得ない。
あの夏にした恋は、もう終わったんだ。

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