黒尾side
ーーー数年後ーーー
黒「懐かしいな。」
あれからあっという間に過ぎた日々。
今日、俺は思い出の地を訪れている。
そう。
今日は、あなたと出会ったあの日だ…
大人になってから見るこの景色は、特別な気がする。
誰もいない校舎
誰もいない中庭
黒「この桜の木…」
あれからもずっと俺は、どこかで探している
あの笑顔を。
"私の願い事はーーーーーー…
またここで、貴方と会うことですよ…"
黒「来たぞ……」
何処にいるんだ?
黒「…………会いてぇよ、あなた…」
春の強くて優しい風が吹き抜ける。
舞い上がる桜の花びらに、想いをのせた。
『鉄朗さん。』
空耳じゃないかと…
黒「………っ!」
『私の願い事…叶えてくれましたね…っ』
涙を流したあなたの笑顔
ずっと探していた、あの笑顔…
霞んで見えた。
両手を伸ばせば
ふわりと舞い降りて………
抱き留めて感じた、あなたの温もり
黒「…っ……あなたっ……あなた!」
『ありがとう………っ…ありがとう…鉄朗さん…!』
腕の中に収まる軽くて小さなあなた
黒「ずっと、言いたかったんだ…」
出会ったあの時から
黒「好きだ、あなた。」
重なる二つの影と、それから…
黒「やっと、見つけた…」
これまでも、これからも…ずっと
「『愛しています。』」
俺の願い
" またあなたと、この場所で……会いたい "
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!