⚠︎暗めです。
乾いた風が吹き抜ける廃墟の街。
そこはつい数ヶ月前迄、大都市ソウルだった。
荒れ果てたその地は、焦げたゴムと腐臭が混ざり合い、空は鉛のように重い雲で覆われていた。
ビルの間を縫うようにして、ホンジュンとソンファは走っていた。
sh「 こっちだ、早く! 」
ソンファが叫ぶ。背中のリュックからカラカラと音がした。
ホンジュンが振り返りざまに銃を構えると、2体のゾンビが猛スピードで迫ってきていた。
hj「 …아씨…!」
パンッ、パンッ。銃声が夜に響く。
追いかけてくる2体の敵を倒したホンジュンは、足元に潜む敵に気が付かなかった。
sh「 홍종이!下だ!!」
ソンファがナイフを抜いて切りかかる。ゾンビの首が裂け、血と黒い粘液が地面に広がった。
その瞬間、ホンジュンはよろけて膝をついた。
hj「 …なんでもない、大丈夫だ 」
sh「 傷、見せて 」
hj「 浅い。かすっただけだ。…お前こそ、無事か? 」
ソンファは返事をしなかった。
否、出来なかった。
彼の目はホンジュンの足首、靴下の内側に滲む紫がかった痣に釘付けだった。
呼吸の音だけが辺りに残る。風すらも止まったようだった。
⸻
一時間後。
廃屋の中、ホンジュンは壁に背を預けて座り込んでいた。
ソンファは黙って彼の隣に座り、ガーゼで傷口を包む。
hj「 …完全に油断してたな、やられてる。俺もああなるのかあ、」
ホンジュンが言った。淡々と、まるで天気の話でもするように。
sh「 違う。まだ判断できない 」
ソンファは声を震わせずに言った。でも、その手が少しだけ、震えていた。
ホンジュンはそっとソンファの指に手を重ねた。
hj「 성화야、お前がいちばん、分かってるだろ。もう、タイムリミットは始まってるって事。」
ソンファは口をつぐみ、黙ったままホンジュンの足首見つめる。
紫の痣は、皮膚の奥へと広がっている。潜伏期間に入った――
それは二人が何度も見てきた、“終わりの始まり”のサインだった。
かつて一緒に逃げた仲間達はもうとっくに散り散りになってしまった。
世界の最後を見に旅をし始めた者、
神に助けを乞い自らの命を捧げた者、
仲間を救うため自ら敵の群れに飛び込んだ者、
孤児に手を差し伸べ今日も誰かの命を救う者、
感染し自ら消息を絶った者、
世界に絶望し2人の前から何も言わず去ってしまった者、
2人は遺された最後の者たちであった。
夜、ホンジュンは眠らなかった。
月の光が壊れた窓から差し込む。
彼は手に銃を持ち、それをソンファの方へと滑らせた。
hj「 ソンファ。俺が完全に変わる前に…撃ってくれ 。」
何も言えなかった。
hj「 お前にしかできない。俺が理性をなくして、お前を傷つける前に…終わらせてくれ 」
ソンファはじっと彼を見つめた。
その目は悲しみにも怒りにも染まらず、ただ静かに、深く、ホンジュンを抱いていた。
sh「 そんなこと、できない 」
hj「 …お願いだよ。俺はお前を傷つけたくないんだ。…頼むよ。」
sh「……じゃあ、俺が先に死ぬ。そうすれば、お前を撃たなくて済むだろ」
その一言で、ホンジュンの目が大きく揺れた。
彼はソンファの手を強く握りしめる。
hj「 야、 バカなこと言うな。俺が…俺が守るって決めたんだ、お前だけは。」
sh「 だったら生きろ。俺と、最後まで一緒にいろ 。」
短い沈黙のあと、彼の真剣な眼差しにホンジュンは小さく笑った。
hj「… 알았어、最期まで…お前の傍にいる」
だがその夜、彼は眠りにつくことはなかった。
ひとり静かに、少しずつ冷えていく身体の感覚を確かめながら、崩れていく自分を受け入れていた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。