気まずい空気が保健室に流れる。
一向にもふと目を合わせようとしないるなと
先ほどのことで思考にふけているもふ。
二人の間で、何か分からないが気持ちの悪いような沈黙が続いた。
るなは叩かれてから初めてもふの顔を見た。
血の気の引いた顔。虚ろな目。彼もまた、るなの顔を見ようとはしなかった。
もふはうつむいて、グっと唇を噛んだ。
それは、もふが小学生の頃である。
その頃から「天才」であったもふは、すでにその頭角を出し始めていた。
そんなもふを大人たちは取り囲んで甘やかした。
もふは、そんな大人たちの態度を少々薄気味悪いものだと感じていた。
近所の子供たちは、もふと関わるとろくなことが起こらないと思っていた。
大人たちに取り囲まれて甘やかされている異端児。
子どもながらに、近づいてはいけないと感じていたのだろう。
しかし、女子は違った。
通常よりも優れているもふの容姿とそのスペックに引かれ
まるで砂糖菓子を見つけたアリのようにもふに近づいた。
もふはそんな周りの人々を見て
人間は醜いものだと、子どもながらに理解した。
そしてそれを理解してしまう己の頭脳を恨んだ。
幼馴染であるどぬくだけは、唯一信用できた。
下心や己の得ばかり考える周りの人間とは、少し違った。
どぬくは周りの大人に止められようと全て無視し
もふを色々な所に連れまわした。
最初はあまり乗り気ではなかったもふも、最終的にはどぬくと共に
色々な所に遊びに行くようになっていた。
それと同時に、もふもどぬくに勉強を教えるようになっていた。
どぬくはニコニコしながらもふの顔を見た。
どぬくはしばらく考えた後、にぱっと笑った。
その言葉にもふがどれだけ救われたのか、どぬくは知らないだろう。
何も知らない幼馴染を見て、もふは誓った。
この先何があっても、絶対にどぬくさんだけは守ろうと。
しかし、その誓いは瞬く間に崩れ落ちることを、その頃のもふは知らなかった。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。