第11話

day10 笑い声の端
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2026/03/02 15:00 更新
 夢の中でも、音がした。



 ぱきん。



 氷を割るみたいな、軽い音。

 目が覚める前に、笑った気がする。

 「またそれ?」って。



 自分で自分に言うみたいに。

 起き上がる。



 カーテンは閉まっているのに、部屋が白い。
orf
うわ、今日も晴れすぎでしょ
 誰もいない部屋でつぶやく。

 声が、少し遅れて返ってきた気がした。

 、、、気のせい。

 階段を降りる。



 いつもの匂い。味噌汁。焼いたパン。誰かの咳払い。



 安心する。
orf
おはよー!
qnly
おはよ
 返事が四つ。

 五人、いる。

 席につく。

 箸を持つ。

 昨日の音のことを、誰も言わない。

 言わないなら、僕が言うしかない。
orf
昨日さ、なんか鳴ったよね
 軽く。あくまで軽く。
dzl
あー、あれね
 ドズルさんがうなずく。
qnly
建物じゃない?
 おんりーが言う。
qnly
古いし
 ぼんさんは味噌汁を飲む。

 何も言わない。

 よし。

 なら大丈夫だ。
orf
空、割れたらウケるよね
 笑って言う。

 誰も笑わなかった。

 一拍遅れて、MENが小さく笑う。

 乾いた笑い。

 なんだそれ。



 空気が、薄い。



 その瞬間。




 ぱき、ぱきん。




 連続で鳴った。

 今度は、はっきりと上から。

 全員が窓を見る。

 ガラスは割れていない。

 でも、外の空に、白い線が増えている。




 一本じゃない。

 二本。三本。




 蜘蛛の巣みたいに、薄く広がる。
orf
、、、うわ
 声が漏れる。

 冗談が出てこない。

 何か言わなきゃ。
orf
合成?ドッキリ?
 自分でもわかる。弱い。

 ドズルが立ち上がる。

 窓に近づく。

 手を伸ばす。

 触れたわけじゃないのに。


 ひびが、ぴし、と音を立てて伸びた。


 全員、息を止める。

 数秒。



 何も落ちてこない。



 空は、まだ、そこにある。

 ただ、割れかけているだけ。
orf
、、、やばくない?
 小さく言う。

 誰も否定しない。

 それでも。
dzl
とりあえず、ご飯食べよ
 ドズルさんが言う。

 その声は、思ったより普通だった。



 椅子に座り直す。

 箸を持つ。

 手が震える。

 味はする。

 ちゃんと、味がある。



 笑おうとする。
orf
まあ、空が割れてもさ
 声が少しかすれる。
orf
僕ら五人いるし?
 今度は、ほんの少しだけ笑いが返る。

 完璧じゃない。

 でも、ゼロじゃない。

 それでいい。



 ぱきん。



 もう一度鳴る。

 今度は、家の中で。




 天井に、細い白い線が走った。




 五人の視線が、同時に上を向く。

 冗談が、喉まで出て、止まる。





 空のひびは、外から内へ。

 確実に、近づいていた。

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