夢の中でも、音がした。
ぱきん。
氷を割るみたいな、軽い音。
目が覚める前に、笑った気がする。
「またそれ?」って。
自分で自分に言うみたいに。
起き上がる。
カーテンは閉まっているのに、部屋が白い。
誰もいない部屋でつぶやく。
声が、少し遅れて返ってきた気がした。
、、、気のせい。
階段を降りる。
いつもの匂い。味噌汁。焼いたパン。誰かの咳払い。
安心する。
返事が四つ。
五人、いる。
席につく。
箸を持つ。
昨日の音のことを、誰も言わない。
言わないなら、僕が言うしかない。
軽く。あくまで軽く。
ドズルさんがうなずく。
おんりーが言う。
ぼんさんは味噌汁を飲む。
何も言わない。
よし。
なら大丈夫だ。
笑って言う。
誰も笑わなかった。
一拍遅れて、MENが小さく笑う。
乾いた笑い。
なんだそれ。
空気が、薄い。
その瞬間。
ぱき、ぱきん。
連続で鳴った。
今度は、はっきりと上から。
全員が窓を見る。
ガラスは割れていない。
でも、外の空に、白い線が増えている。
一本じゃない。
二本。三本。
蜘蛛の巣みたいに、薄く広がる。
声が漏れる。
冗談が出てこない。
何か言わなきゃ。
自分でもわかる。弱い。
ドズルが立ち上がる。
窓に近づく。
手を伸ばす。
触れたわけじゃないのに。
ひびが、ぴし、と音を立てて伸びた。
全員、息を止める。
数秒。
何も落ちてこない。
空は、まだ、そこにある。
ただ、割れかけているだけ。
小さく言う。
誰も否定しない。
それでも。
ドズルさんが言う。
その声は、思ったより普通だった。
椅子に座り直す。
箸を持つ。
手が震える。
味はする。
ちゃんと、味がある。
笑おうとする。
声が少しかすれる。
今度は、ほんの少しだけ笑いが返る。
完璧じゃない。
でも、ゼロじゃない。
それでいい。
ぱきん。
もう一度鳴る。
今度は、家の中で。
天井に、細い白い線が走った。
五人の視線が、同時に上を向く。
冗談が、喉まで出て、止まる。
空のひびは、外から内へ。
確実に、近づいていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。