第93話

一目惚れ___💎🖤
883
2023/10/15 14:00





なんでもない一日


大学帰りのバスで


2人掛けのソファー、俺は窓際


隣には知らないサラリーマン


前にある扉が開いて


人が降りていく


外を眺めても景色は変わらず


まるで違う世界で生きているような


バカみたいに騒ぐ人たちが


バス停の目の前の居酒屋にはいた


店の外でも、バスに乗っていても


笑い声が聞こえてきそうなほどの


雰囲気がバチバチと伝わってくる


金曜日の夜だから


変なことではないが


今日も誰もいない家に1人で帰る自分を


憐れんでしまうのは当たり前だった


バスが動き出して


視界の中の街が動き出す


死んだ顔をしている俺を


この賑やかな街はまるで歓迎してないようだった


イヤホンから流れるエモーショナルな音楽に


足元でリズムをとりながら


また、バスが止まり


ドアが開く


俺と同じような顔をしたサラリーマンが


何人も降りていく


そんな目の前の世界が


スローモーションのように見えたのは


すぐ後だった


伏し目がちに長い髪を揺らしながら


バスを降りていく目の前の女の人


イヤホンから流れていた音楽も聞こえなくなって


降りてバスの横を歩いていく


その姿を気づけば目で追いかけていた


バスの扉が閉まる音がして


慌てて荷物を持つ



北斗「降りますっ、降ります、!!!」



閉まりかけたドアがまた開く


隣のサラリーマンは


うざったそうにしながらどいてくれて


頭を下げたあと


慌ててバスを降りた


彼女の歩いて行った方の先には


小さな公園があって


その公園のベンチに座っていたのは


背の高い男の人だった。


何を思ったのか


慌てて降りた自分がバカみたいで


その2人を眺めているうちに


手を繋いで仲良さげにこちらへ歩いてくる


俺は素直に道を開けて


目を前を通っていく


その人をまた目で追っていた


隣に男がいても


その輝きは消えはしなかった


一瞬の一目惚れはこうして終わった


ここから家まで


どれだけ歩くか見当もつかないが


さっきの彼女を思い返していれば


あっという間に思えそうなほど


衝撃的で


お手本のような一目惚れだった








プリ小説オーディオドラマ