ボムギュさんに連れられ、私たちは迷路のような廊下を息を潜めて進んだ。
変装しているとはいえ、いつ祖父や他の男衆に見つかるか分からない緊張感で、私の心臓は嫌な音を立てている。
ボムギュさんが指さした先は、テヒョンさんの接客部屋だった。
いつも冷静で論理的な彼が、客の女性の手を取り、切なげな表情で愛の言葉を囁いている。
その完璧な演技に、私は言葉を失った。
別の部屋では、ヨンジュンさんが客を情熱的に抱き寄せ、耳元で愛を誓っていた。
数日前、私に見せたあの剥き出しの情熱と同じような熱量で。
ボムギュさんは鏡のように美しい顔を歪めて笑った。
彼は他のメンバーの嘘を暴くことで、私をこの世界の真実へ引きずり込もうとしているようだった。
その時。
背後から、香水の匂いと共に鋭い声が響いた。
振り返ると、そこにはこの店の上客であり、ボムギュさんに異様な執着を見せる貴婦人が立っていた。
彼女は変装した私を、値踏みするように冷たい目で睨みつける。
ボムギュさんは一瞬でNo.3の顔に戻ったが、女の疑念は晴れなかった。
彼女は私の肩を乱暴に掴み、無理やり顔を覗き込もうとした。
ボムギュさんの声が、廊下の空気を切り裂いた。
さっきまでの愛想笑いが消え、凍りつくような殺気が彼から放たれる。
彼は女の手を乱暴に振り払うと、私を自分の背後に隠した。
女はあまりの豹変ぶりに絶句し、震えながらその場を去っていった。
廊下に沈黙が戻る。
ボムギュさんは肩で息をしながら、ゆっくりと私の方を振り返った。
彼は震える手で、私の変装用のリボンを解いた。
ボムギュさんの瞳に溜まった一粒の涙。
それは、彼が今日見せてくれたどの嘘よりも、生々しく私の胸に刺さった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!