つい数日前に冬休みに入ったと思っていたのに、すぐに迎えてしまった新年。春にはいよいよ高校3年生、つまり受験生。
終業式の日には"そろそろ受験勉強を始めるように"と担任に言われたから、少しだけ今までの復習を始めて。
だけど、せっかくのお正月なのに勉強しかしないというのは流石に耐えられなくて、初詣のついでに彼女と会うことになった。
といっても今日は1月4日だけど
元日は人で溢れかえるだろうと予想し、少し日にちをずらしたのにも関わらず想像以上の賑わいをみせる午後1時。
待ち合わせした時間にまだなっていないけど、ちょっと心配になってきたその時、後方から私の名前を呼ぶ声が聞こえ、辺りを見渡す。
駅から神社までは少し距離があって、道のりも少しだけ険しい。それに人も多いから、歩き出すと同時にミンジュの手を握り、絶対にはぐれないようにする。
彼女がすることなす事全てが可愛くて癒やされる。
ミンジュとは高校からの付き合い。まだ知り合って2年、付き合って半年の仲だけど、私はミンジュより心のきれいな人を見たことがない。
そんなミンジュと同じクラスになったことをきっかけに私がアタックして付き合えることになった。
ほんと、人生何が起こるか分からないよね。
か、かわい……
なんとも愛おしい回答に思わず頭が回らなくなる。が、不審に思われないように頑張って会話を続ける。
その後も会話を続けながら神社を目指していると、ようやく鳥居が見えてくる。
境内に入ると、参拝客が長い列をなしていた。
私達もその列に並び、順番を待つ。
受験のこともそうだけど、健康も大事だし、家族や友達、そして今隣にいるミンジュも大事。
お願い事するときには名前と住所も言ったほうがいいって聞くし…
私だけ5分くらいお願いしちゃうんじゃないかなどと変な心配をしている間にもう私達の番が回ってくる。
急いで5円玉を取り出し、お賽銭を入れ、2礼2拍手をし、お願い事をする。
さっきまで何をお願いするか色々考えていたけど、結局、今の私にとって1番大事なことはこれだった。
受験のことは神様にお願いするんじゃなくて、自分が頑張らなきゃ。そう思ったから。
最後に礼をし、ちらっと横にいるミンジュを見ると、まだお願い事をしている最中だった。
その後2人でおみくじを引き、お守りも買えたところで帰路につくことに。
私と同じことをミンジュも願ってた。
その事実に胸が暖かくなって、嬉しくなっていたら急に焦ったようにそう言うミンジュがおかしくて、可愛くて。
それだけ真剣に思ってくれていたんだってことが伝わってきて。
私のためだけじゃなく、ミンジュのためにも絶対にこの願いは叶えなきゃ。
そう思った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。