第39話

39. 願い事 ミンジュ
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2023/04/08 06:00


つい数日前に冬休みに入ったと思っていたのに、すぐに迎えてしまった新年。春にはいよいよ高校3年生、つまり受験生。


終業式の日には"そろそろ受験勉強を始めるように"と担任に言われたから、少しだけ今までの復習を始めて。


だけど、せっかくのお正月なのに勉強しかしないというのは流石に耐えられなくて、初詣のついでに彼女と会うことになった。


といっても今日は1月4日だけど

あなた
(意外と人多いな…大丈夫かな…)

元日は人で溢れかえるだろうと予想し、少し日にちをずらしたのにも関わらず想像以上の賑わいをみせる午後1時。


待ち合わせした時間にまだなっていないけど、ちょっと心配になってきたその時、後方から私の名前を呼ぶ声が聞こえ、辺りを見渡す。




ミンジュ
ミンジュ
あなた~
あなた
ミンジュ!よかった無事で!!
ミンジュ
ミンジュ
ぶ、無事….?笑
あなた
人いっぱいだからもみくちゃにされてないかなって心配だった。笑
ミンジュ
ミンジュ
あぁ…笑 大丈夫だよ。
あなた
よし、じゃあ行こ!



駅から神社までは少し距離があって、道のりも少しだけ険しい。それに人も多いから、歩き出すと同時にミンジュの手を握り、絶対にはぐれないようにする。



ミンジュ
ミンジュ
あなた、私が来るまで結構待った?
あなた
ん?そんなことないよ
ミンジュ
ミンジュ
ほんと?手すごく冷たいよ。
あなた
あ…ごめん。
ミンジュ
ミンジュ
なんで謝るの笑 私が温めてあげる~
あなた
ふふ、ありがと。


彼女がすることなす事全てが可愛くて癒やされる。


ミンジュとは高校からの付き合い。まだ知り合って2年、付き合って半年の仲だけど、私はミンジュより心のきれいな人を見たことがない。


そんなミンジュと同じクラスになったことをきっかけに私がアタックして付き合えることになった。


ほんと、人生何が起こるか分からないよね。





ミンジュ
ミンジュ
今向かってる神社は有名なところなの?
あなた
うん、この辺りでは有名みたいだね。
学業の神様が祀られてるから受験生がたくさん合格祈願しに来るって聞いたよ
ミンジュ
ミンジュ
おぉ~そうなんだ
ミンジュ
ミンジュ
私達もうすぐ3年生だもんね…
あなた
ほんと、あっという間だよね~
ミンジュ
ミンジュ
…やだなぁ、受験生。
あなた
ミンジュがそんなこと言うの珍しいね?
ミンジュ
ミンジュ
だって…あなたと一緒にいられる時間が減っちゃうじゃん…


か、かわい……


なんとも愛おしい回答に思わず頭が回らなくなる。が、不審に思われないように頑張って会話を続ける。


あなた
でも学校で会えるでしょ…?
ミンジュ
ミンジュ
そうだけど…そうじゃないもん…。
あなた
…?


その後も会話を続けながら神社を目指していると、ようやく鳥居が見えてくる。


境内に入ると、参拝客が長い列をなしていた。


私達もその列に並び、順番を待つ。


あなた
(何をお願いしようかな…)


受験のこともそうだけど、健康も大事だし、家族や友達、そして今隣にいるミンジュも大事。


お願い事するときには名前と住所も言ったほうがいいって聞くし…


私だけ5分くらいお願いしちゃうんじゃないかなどと変な心配をしている間にもう私達の番が回ってくる。


急いで5円玉を取り出し、お賽銭を入れ、2礼2拍手をし、お願い事をする。




あなた
(ミンジュといつまでも一緒に居られますように)


さっきまで何をお願いするか色々考えていたけど、結局、今の私にとって1番大事なことはこれだった。


受験のことは神様にお願いするんじゃなくて、自分が頑張らなきゃ。そう思ったから。


最後に礼をし、ちらっと横にいるミンジュを見ると、まだお願い事をしている最中だった。


その後2人でおみくじを引き、お守りも買えたところで帰路につくことに。



あなた
ミンジュは何をお願いしたの?
ミンジュ
ミンジュ
…ききたい?
あなた
うん!
ミンジュ
ミンジュ
…やっぱちょっと恥ずかしいかも。
あなた
え、なんでよ。笑
ミンジュ
ミンジュ
その…あなたと一緒に居られますようにっ、て
ミンジュ
ミンジュ
あ、ちょっとまって!お願い事って人に言ったら叶わないんじゃ…!
あなた
あっ…


私と同じことをミンジュも願ってた。


その事実に胸が暖かくなって、嬉しくなっていたら急に焦ったようにそう言うミンジュがおかしくて、可愛くて。


それだけ真剣に思ってくれていたんだってことが伝わってきて。


私のためだけじゃなく、ミンジュのためにも絶対にこの願いは叶えなきゃ。


そう思った。






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