――渡辺翔太 side――
阿部亮平は、いつも俺の視界にいる。
それが当たり前すぎて、
今まで深く考えたことなんてなかった。
スタジオでのリハーサル。
音が止まると、自然と隣に阿部が来る。
そう言って笑う阿部は、
昔から何も変わらない。
肩が軽く触れる距離。
離れようと思えば離れられるのに、
俺は動かない。
後ろから聞こえた声に、
少しだけ肩が跳ねた。
二人してそう言って、
顔を見合わせる。
——その瞬間、
胸の奥が妙にざわついた。
楽屋に戻っても、
阿部は当たり前みたいに俺の隣に座る。
たったそれだけの会話。
なのに、
阿部が他メンバーに笑いかけると、視線が勝手に追ってしまう。
目黒が阿部に話しかける。
深澤が肩を組む。
その一つ一つに、
理由のない違和感を覚える。
「阿部は誰とでも仲いいだろ」
そう自分に言い聞かせる。
それなのに。
阿部がふと、
俺の方を見て微笑んだ。
短く返した声が、
少しだけ掠れていた。
前からずっと一緒だった。
今さら、何を気にしてる。
なのに——
「翔太」
名前を呼ばれただけで、
心臓が無駄に跳ねる。
これは、
勘違いだ。
そう思わないといけない。
まだこの時の俺は、
この感情に名前をつける勇気すらなかった。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!