……て
…きて
目が覚めた、というべきか
目を開いても闇が広がる
異様に静かだが、微かな消毒液の香りで医務室だということがわかる
なぜ生きてるのか
腹部を触れてみれば皮膚を触っていると感じる
そして思い出す夢のこと
自分が生きていることに気を取られてほぼ覚えていないが誰かいた
酷く優しい、春の陽だまりのような暖かな声
私が生きているのは彼の声に何かあるのか
体を起こそうと腹筋に力を入れると微かな痛みが襲う
これだけで済んだのが奇跡だ
起き上がり、ベットから出ると、医務室とは違う空間の大きさ
ここはどこだ?
鼻で息をすると異臭がする
そこまで強い匂いではないが嗅いだことのない匂いだ
…いや、嗅いだことある
あの少年院で嗅いだことが_
あ、ここ、
死体安置所だ
すると自分の着ている服を手で触る
着ているのは1枚だった
そして患者服のような簡易的な服
硝子さんが着替えさせてくれたのかな?
取り敢えず自分の部屋に向かう
安置所から出たとき廊下は明るくてまだ誰かいるのだと分かった
廊下の窓の外を見るが夜なのか星がきらきらと輝いていた
一応誰にも会わないように気をつけながら歩いていく
一歩、歩くたびにやっぱりお腹がずきずきする
これくらいは我慢しないとかぁ…
なんとか部屋に行き着いて着替える
時間を見れば夜の10時半
夜中だ〜と馬鹿みたいに思っていたが事の大きさに気付いた
死体安置所にいたということは私は死んでいるということ
死んだ人間が生きていたら大問題じゃないか?
患者服を手に持ったまま冷や汗が噴き出る
部屋の中を歩き回りながらどうするか考える
取り敢えず
虎杖がいるかもしれない
とは言っても地下室なんて何処にあるかわからない
完全に勘だよりだ
患者服を片手に持って歩いていく
ぶらぶらして多分数十分
地下へと続く階段を見つけた
変なドアを開けた自分を褒めたい
コンクリート製の階段を裸足で降りていく
降りていくと光が差し込んでいることに気づいた
それに音も聞こえてくる
ぺたぺたと音を微かにたてながら最後の段を降りる
そこには虎杖がいた
虎杖は気づいていないのかソファに座り、映画を見ていた
映画はもう後半なのか重要人物らしい人たちが慌てて走っている
虎杖は気づいていないので私も立ったまま映画を見ることにしたが、かなり面白いというわけではない
どちらかと言うと面白くない
めちゃめちゃ演技演技しているのだ
正直言ってストーリーに飲み込めない
階段の最後の段に座り、虎杖の後頭部と微かなテレビの光を見る
暇極まりない
患者服を両腕で抱きしめ、前傾姿勢でいると眠気が襲ってきた
エンディングなのか音楽が流れたところで目が覚める
未だに気づくことなくいる虎杖
ちょっと脅かしてみたくなり、背後まで歩く
…なんで気づかないの?
まぁとりあえず脅かしてみる
それなりの声量で脅かせば運動神経のいい虎杖は被せるように悲鳴を上げる
そして直ぐにツカモトに殴られた
あ、ツカモトいるの忘れてた
すまん
殴られた拍子にソファから落ちた虎杖
やりすぎたかなと思い、ソファの背もたれから声をかける
すると私の顔を見るなり叫ぶ
ちょっと失礼じゃない?
何その幽霊でも見たかのような反応
………あながち間違いじゃないか
ひと叫びし終えた虎杖はツカモトに殴られた頬に手をあてながら私を見る
患者服を背もたれに掛けたあとに手を広げてそんな事を言ってみる
死にたて生きたてほやほやの深夜テンションだからまぁまぁ高いよ、テンション
そのまま硬直している虎杖を見つめていれば目が涙に覆われていた
スッと立ち上がりソファ越しに抱きしめられた
やだ私、虎杖に抱きしめられてる
そんな事を考えてる私とは違い、虎杖の息が私の肩に当たり、鼻をすすっている
虎杖の体温は高く私の体温が霞んでいく
力の強い虎杖を押し返しても私の力じゃ押し返せないはずなのにそっと体を押せば離れていく体
目を合わせると未だに目に涙を浮かべて私を見つめている
そう言えば両肩を掴まれぐわんぐわんと前後に揺らされる
うっ…気持ち悪い、揺らさないで…
揺らしてる間も何か言っているがよく聞こえない
一通り私を揺らし終えて落ち着いた様子の虎杖に問いかける
そう言いながら次のDVDを入れる
DVDなんて久しぶりに見たな
そう言えばこれ五条から借りたものなんでしょ?
あの人DVDなんて見てたんだな〜
意外じゃないけど
もっといってると思ってた












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。