sideリオ
夕方の風が少し冷たくて、 校舎裏は、昼間の騒がしさが嘘みたいに静かだった。
後ろから名前を呼ばれて、肩がびくっと跳ねる。 振り返らなくても、誰の声かは分かっていた。
なるべく、平気な声を作った。 泣いてたことも、全部見られてないふりをして。
返事をしない私の横に、先輩はゆっくり並んで立つ。 無理に距離を詰めてこない、その態度が逆に苦しい。
少し間を置いて、ジュノン先輩が口を開いた。
その一言に、胸がぎゅっと締まる。
夕焼けに染まった横顔は、 いつもの余裕のある先輩じゃなかった。
その言葉を聞いた瞬間、 ずっと張りつめていた何かが、少しだけ緩んだ。
声が震える。
ジュノン先輩は、否定しなかった。 その代わり、苦しそうに目を伏せる。
たったそれだけ。 でも、嘘じゃないって分かる。
先輩は、はっきりした声で続けた。
ぎゅっと拳を握る。
少し沈黙が流れる。 そのあと、ジュノン先輩は小さく笑った。
先輩は一歩だけ距離を取って、 まっすぐ私を見る。
胸が、ちくっと痛む。 でも、目は逸らさなかった。
ずるい。
でも、逃げてない。
しばらく黙ってから、私は小さく息を吐いた。
顔を上げて言う。
ジュノン先輩は少し驚いた後、
困ったように笑った
私も、少しだけ笑う。
夕焼けの中、 二人の間にあった重たい空気が、 ほんの少しだけ和らいだ。
完全な仲直りじゃない。 でも――
壊れたままじゃない。
リオとジュノンは、 それぞれの痛みを抱えたまま、 一歩だけ前に進んだ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!