それは、
一つの事件というより――
積み重なった判断だった。
面会後の不安定さ。
作業中の集中力低下。
些細な言い合い。
規則ギリギリの態度。
どれも、
単体なら見逃されたかもしれない。
でも――
隔離棟では、
「積み重なり」は
見逃されない。
⸻
朝。
四人の看守が、
揃って独房の前に立った。
空気が、
いつもと違う。
藤原が、
淡々と告げる。
「……お前ら三人」
「移動や」
短い言葉。
西畑が、
一瞬だけ息を止める。
「……どこに」
「説明は、
移動後」
それ以上、
何も言われなかった。
⸻
手錠はない。
でも――
自由もない。
廊下を歩く足音が、
やけに大きく響く。
高橋が、
小さく呟く。
「……やばいとこ、
ちゃうよな」
誰も、
答えられなかった。
⸻
扉が、
変わる。
今までより厚い。
今までより無機質。
中に入った瞬間、
空気が違うと分かった。
狭い。
冷たい。
音が、
吸われる。
「……ここが、
新しい部屋や」
道枝の声。
感情は、
乗っていない。
それが、
余計に怖かった。
⸻
説明。
「ここは、
管理強化区域」
「会話制限」
「作業時間短縮」
「巡回回数増加」
三人まとめて、
同じ条件。
例外は、
ない。
⸻
扉が閉まる。
重い音。
一瞬、
誰も動かなかった。
高橋が、
先に声を出す。
「……俺ら」
「ほんまに、
やらかしたな」
長尾は、
壁に手をつく。
「……分かってた」
「このままやと、
来るって」
西畑は、
唇を噛んだまま、
何も言わない。
⸻
沈黙。
さっきまでの
“守られている感覚”は、
ここにはなかった。
「……なぁ」
高橋が、
不安そうに言う。
「ここ、
戻れるんかな」
長尾が、
即答しない。
西畑が、
ようやく口を開く。
「……戻るしかないやろ」
「ここで、
壊れたら」
「ほんまに、
終わりや」
⸻
夜。
灯りは、
さらに暗い。
物音一つで、
神経が跳ねる。
高橋が、
布団の中で小さく言う。
「……怖い」
それを、
否定する声はなかった。
長尾が、
低く言う。
「……せやから」
「三人で、
生き延びるしかない」
西畑が、
静かに頷く。
「……問題児やろ」
「せやったら」
「最後まで、
三人一緒や」
⸻
外では、
看守の足音が
何度も通る。
守られているわけじゃない。
信頼も、
遠のいた。
でも――
まだ、
三人は一緒にいる。
それだけが、
この場所で
唯一の救いだった。
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お久しぶりです!作者です!ちょっと色々あってこちらの小説はお休みしてました!なんですけど今日から再開します!時間は不定期にはなるんですけど毎日投稿しますので楽しみにしててください!
以上!作者でした!












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!