「……」
やっと玄関のドアが開いたかと思えば"ただいま"の一言もなしに家に入ってくるジミン
『どこ行ってたの?』
こんなこと、毎回毎回訊きたくなんかないよ
「コンビニ」
分かりやすく面倒くさそうな顔をすると、目線も合わせず適当に答える
『コンビニに行くだけなのに、なんでこんな時間に帰ってくるの?』
「本当のこと言ったところでどーすんの?」
『は…?』
「女ばっかのクラブで遊んでましたよって言ったところでなにかなんの?って言ってんだよ」
呆れる…その気持ちと同時に悲しくなった。ジミンがクラブ通いしていることは前々から知っていたことなのに、本人から冷めた口調で言われるのは物凄く悲しい
私に対しての感情がなくなったんなら、さっさと私を捨ててしまえばいいのに…
心ではそう思っていても、実際に口に出して言おうとすると無理
そこで本当にばいばいになってしまったら、私は無理なんだ。ジミンが好きだから。こんなクズ野郎でも愛してるから。クラブ通いするところは大嫌いだけど、私がジミンから離れられない
ジミンはきっといつでも私から離れられる準備はできている
『私に悪いとか…思わないの?』
「……思わねーよ」
冷蔵庫を開けてビールを取ると、喉をごくごくと鳴らしていた
「大体お前、今の今まで何も言ってこなかったじゃん。俺が他の女に貢いでること知っておきながら、無視してたろ」
『それが?』
「所詮お前は、俺から離れられない馬鹿。心の中では俺の事を心底嫌ってるみたいだけど、実際に口にしようとすると俺の口からどんな返事が返ってくるかが怖くてなんも言えねーじゃん。」
『…』
「そうだろ?」
その通りすぎて何も言えなかった
「なに……泣いてんの?」
ジミンはビールをコトンと音を立てて置くと私に近寄って顔を覗いてきた
『泣いてないよ』
ジミンの顔なんて一切見ずに寝室に閉じこもった
嫌い……ジミンのあーいうところ…全部 大嫌いだ
なんであんな罪深い男に惚れてしまったのだろうか…
彼はもう私なんかのことを好きではないと知りながらさようならをするってなると駄目なんだ
布団にくるまっていると、暗い部屋の中から白い光が差し込んだ
眩しい……と思って布団を頭より上に被る
けれどそれもバサッと音を立てて取られてしまった
ジミン…私の嫌いな人、
『なに…』
暗い影の中に隠れているジミンの顔は全く見えない
『なにもないなら、布団返して…』
ジミンの手から布団を奪おうとしたけれど頬を片手で掴まれて無理やりキスをされた
『ん…!』
ベルトを外す音…
なにこれ………嫌だ
『ジミン、…やめて』
私の服を無理にでも脱がそうとしてくるジミンの腕をぎゅっと掴む
『やめてってば……ッ!』
胸板を思い切り押すと尻もちを着いた
ダサい…ダサいよほんと……
『私のこと、玩具だとでも思ってるの?そんな簡単に操られないから…!』
脱がされてしまった体を隠すように布団を被る
「ふ…ッ」
儚く笑われた
尻もちついた体を持ち上げて再び立つと私をその目で睨んだんだ
「せっかく久しぶりに使ってやろうと思ったのに………。」
「お前、セックスがしたかったんだろ?俺と」
「だから拗ねたフリしてんだろ?」
なんでそういう捉えかたしかできないの?
そう捉えたから私と体を重ねようとしたの?
しょうがなく付き合ってるの?
『ジミンは…なにも分かってない……』
「…は?」
『私、……本当のこと言うと、ジミンに近づく女の人、全員嫌いだよ。そんな人達にベタベタくっついてるジミンも大っ嫌い』
『世の女性がコロッと落ちちゃうよな笑顔見せて、体合わせて…私をひとりにして……なにが楽しいの?なにが面白いのよ、』
『ジミンは私のなのにって…私はジミンのなのに、ってつくづく思うよ。』
『なんでジミンは、そういう風に思ってくれないの?』
『私達、なんの為に付き合ってるの?しょうがなく?好意で?なわけないよね。こんな付き合い、お互いを狂わせてるだけじゃない……』
遂に自分の口から言った
楽になった気がした。これでジミンに等々本気で嫌われたなって
『……引いたでしょ』
「……」
黙ってるっていうことはそうなんだね
『ジミンは、私のことを自分のものだなんて思ったことないでしょ?俺はお前のものじゃないって思ったでしょ…。全部知ってるよ、全部分かってるよ』
『でもね、好きなものは好きなの。』
「…………お前、俺のこと大好きじゃん」
『だから…そうだって言ってるで、ッ』
私の顎を掴んで噛み付くようなキスをしてきた
さっき嫌だって言ったのに。やめてって言ったのに
『ジミ…っ』
「嫌なら嫌だって言ってみろよ。さっきは本気でやめて欲しかったから、俺のこと投げ飛ばせたんだろ?口先だけの言葉じゃないんだったらさっきみたいに俺に手、出してみれば?」
本当に…この人には勝てない
だって私を操るのが物凄く上手いから
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。