羅刹時代、無陀野の隣に立つ少女がいた。
恋人と呼ばれてはいたが、そういう関係ではない。
ただ、誰よりも言葉を交わし、
誰よりも背中を預けていた。
即答だった。
戦いは、最短で終わらせるもの。
余計な動きも、余計な負傷も、
彼にとってはすべて“無駄”だ。
それ以上は続かない。
それでも彼女は、隣に立ち続けた。
戦闘の合間、ふと彼女が言う。
わずかに間が空く。
切り捨てるような返答。
彼女は一瞬だけ目を細めて、それから笑った。
——その問いに、意味が生まれる日が来る。
彼女は、ある日命を落とした。
詳細を、無陀野は語らない。
ただ一度だけ。
そう言った。
それが誰に向けた言葉なのかは、分からない。
彼女には、従姉妹がいた。
以前、彼女がそう言ってた
その言葉に、返事はなかった。
興味がないわけではない。
ただ、必要がないから口にしないだけだ。
それでも、名前だけは覚えている。
――あの時、初めて会った時。
崩れかけた戦場で、誰よりも遅れて動いた少女がいた。
判断が遅いわけじゃない。
ただ、全部見てから選ぼうとしていた。
結果、動き出した時にはもう、
余計なものが多すぎた。
それでも。
小さく呟いて、彼女は空間ごと削り取る。
瓦礫も、血も、音も。
まとめて、跡形もなく消えた。
わずかに、同じ反応が零れる。
無駄が、なかった。
これは、無陀野の隣にいた彼女の物語ではない。
——その従姉妹の物語だ。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!