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第1話

Prologue
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2026/04/19 13:03 更新
羅刹時代、無陀野の隣に立つ少女がいた。
恋人と呼ばれてはいたが、そういう関係ではない。
ただ、誰よりも言葉を交わし、
誰よりも背中を預けていた。
無陀野
前に出過ぎだ
彩芽
カバー出来てるでしょ
無陀野
無駄な動きが増える
即答だった。
戦いは、最短で終わらせるもの。
余計な動きも、余計な負傷も、
彼にとってはすべて“無駄”だ。
彩芽
冷たいね
無陀野
事実だ
それ以上は続かない。
それでも彼女は、隣に立ち続けた。
彩芽
ねぇ
戦闘の合間、ふと彼女が言う。
無陀野
なんだ
彩芽
私が居なくなったらどうする?

無陀野
……は
わずかに間が空く。
無陀野
仮定が無意味だな。
起きてないことを考える時間が無駄だ
切り捨てるような返答。
彼女は一瞬だけ目を細めて、それから笑った。
彩芽
そっか










——その問いに、意味が生まれる日が来る。
彼女は、ある日命を落とした。
詳細を、無陀野は語らない。
ただ一度だけ。
無陀野
無駄死にだ……
そう言った。
それが誰に向けた言葉なのかは、分からない。





彼女には、従姉妹がいた。
彩芽
要領は悪いけど、ちゃんと考えて動く子
以前、彼女がそう言ってた
彩芽
自分で選んで、ちゃんと失敗する。
で、次は外さないの
その言葉に、返事はなかった。

興味がないわけではない。

ただ、必要がないから口にしないだけだ。
それでも、名前だけは覚えている。







――あの時、初めて会った時。
崩れかけた戦場で、誰よりも遅れて動いた少女がいた。

判断が遅いわけじゃない。
ただ、全部見てから選ぼうとしていた。

結果、動き出した時にはもう、
余計なものが多すぎた。

それでも。
あなた
それ、要らない
小さく呟いて、彼女は空間ごと削り取る。
瓦礫も、血も、音も。
まとめて、跡形もなく消えた。
無陀野
……は
わずかに、同じ反応が零れる。

無駄が、なかった。


これは、無陀野の隣にいた彼女の物語ではない。






——その従姉妹の物語だ。

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