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第1話

世界中で一番/前編
170
2023/02/20 21:10
世界中で一番
傘村トータ 様
煉獄さん&炭治郎
です。
炭治郎視点
煉獄さんがあの悪夢のような日に呑まれてから今日で2ヶ月。
体の傷は癒えてきたけど
心の傷はまだまだ治りそうにない。
だからか、最近下ばかり向いて歩くようになってしまった。
善逸にも、「らしくない」といわれるし
伊之助にも、「紋次郎!どうしたんだ?」と怪訝な顔や心配な顔をさせてしまっている。
でも、下を向くようになってから気付いたことは
煉獄さんのように暖かで綺麗な花が咲いているということ。
それに、いろんな花がある、ということに気付いてここ最近は蝶屋敷の皆にあげるために花を摘んでいる。
もしも、あの人が生きていたら。時折そんなことを考えてしまう。
もしもこんなふうに下を向く俺をみたらがっかりするかもしれない。でも、もしかしたら元気付けてくれるかもしれない。
「竈門少年!胸を張っていきろ!」とか。
「無理はするな!」とか。
気配りやさんの彼は言ってくれたかもしれない。笑いながらきっと言ってくれる。
今の俺にとって一番辛いのは、顔をあげること。
情けない気もするけど、暗い方向に心がいってしまう。
その時、ふと、声が聞こえた。
煉獄杏寿郎
『竈門少年!顔をあげられないのは情けないことではない!』
煉獄杏寿郎
『俺は君に手を振っているのだから君はこっちを向けばいい!そうすれば上を向ける!』
そう導いてくれた気がした。
そして気付いた。
この人に対して今できる精一杯のことは。鬼を狩るでもなく、謝るでもなく、
竈門炭治郎
(「ありがとう」だ。)
そうか。今導いてくれたのは。
竈門炭治郎
(俺が道に迷っていたから…どうすべきかわからなくなっていたから…)
そうだ。煉獄さんはいつも困っているときに手を差しのべてくれている。
竈門炭治郎
(煉獄さんは今、きっとなんの苦しみのない、安らかなところにいるのかな)
そんなことを考え、笑みがこぼれる。それに、今までかかっていたムダな力が一気に抜けた。
竈門炭治郎
俺の感謝の気持ち、届いたかな…?
そう口に出さずにはいられなかった。
花畑に横たわってみる。

そこには、煉獄さんの明るい笑顔と一筋の光が見えた_____

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